セッション情報 ワークショップ18(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

治療困難病変に対する胃ESDの実際,工夫 ≪ビデオ≫

タイトル 内W18-12:

胃内視鏡的粘膜下層剥離術における糸付きクリップ牽引法の有効症例の検討

演者 小柳 和夫(市立川崎病院・外科)
共同演者 大森 泰(慶應義塾大・内視鏡センター), 掛札 敏裕(市立川崎病院・外科)
抄録 【目的】内視鏡的粘膜下層剥離術(以下,ESD)において病変の部位や線維化などにより粘膜下層剥離に際して視野展開が困難となる症例を認める.今回,われわれは胃ESD施行時に糸付きクリップ牽引法を視野展開において使用した症例を検討し,その有効例を類推した.
【患者と方法】当院にて胃腫瘍性病変に対して内視鏡的治療を施行した254例を対象とした.ESDは針状メスを用いて施行し,糸付きクリップはオリンパス社製止血クリップと手術用絹糸を用いて作製した.糸付きクリップは切除粘膜の口側端にかけ口腔外の絹糸を鉗子にて把持してカウンタートラクションに供した.糸付きクリップは視野展開不良のため粘膜下層剥離が困難になった場合に使用した.糸付きクリップ使用症例の臨床腫瘍学的特徴を検討した.
【結果】糸付きクリップは16例(男性12例:女性14例.年齢64-84歳;中央値75歳)で使用されていた.病変部位は体上部/中部/下部/前庭部が各2/3/7/4例で,周在性は前璧/小彎/後壁/大彎が各1/4/9/1例であり,体部後壁病変が多かった.病型はIIa/IIc/IIa+IIcがそれぞれ8/6/2例であり,切除粘膜長径は最大57,最小21mmで中央値43mmであった.糸付きクリップ使用理由は体部病変に関しては重力効果が得にくかったため,前庭部病変は粘膜下層の瘢痕化のために視野展開が不良であったことが主な理由であった.合併症は1例に遅発性穿孔を認めたが,切除後の凝固止血による熱損傷が原因と考えられた.組織学的所見ではtub1/tub1+tub2が各13/3例で後者の1例にpor混在を認めた.壁深達度はM/SM1/SM2が13/1/2例でSM1とSM2の各1例に脈管侵襲を認めた.切除断端は水平断端,垂直断端ともにすべて陰性で追加手術を施行した1例を含めて再発を認めていない.
【結語】視野展開の得にくい体部後壁病変や粘膜下層の瘢痕化の著明な症例に糸付きクリップによる牽引は有効と考えられた.手技は安全かつ容易であり,今後,汎用性の高いデバイスの開発が期待される.
索引用語 胃, ESD