抄録 |
【背景と目的】広く普及した早期胃癌に対するESDにおいて,今尚,瘢痕合併例や体部大弯症例や出血の多い病変等困難例とされる病変も存在する.我々は粘膜下層への安定した潜り込みや粘膜下層の良好な展開が安定的に得られれば克服できる例が多いと考え,通常の胃ESDにおいて簡便に外科医の左手的に病変を挙上し良視野を保ち剥離時のCounter Tractionも維持して剥離も容易かつ簡便・安全・安価に行う方法として市販のクリップとスネアで病変を挙上しESDを行う方法を開発し有用性を確認したので報告する.【対象と方法】2008年4月から2012年9月で当院で早期胃癌のESD施行の350例中,年齢,性別,病変部位,病変型,組織型,線維化,瘢痕の有無等を一致させたA群25例とB群25例を設定し前向きに検討した.A群は通常の局注と周囲切開後に粘膜下層剥離補助で病変の牽引至適端にクリップを装着し,内視鏡のチャンネルを通した生検鉗子で,スネア先端を摘み誘導しスネアでクリップを把持し適度にCounter Tractionをかけ病変をLiftさせESDを行った(CSL-ESD).B群は局注剤のみのLiftingでESDを施行した(non-CSL-ESD).A,B群とも,ITナイフ2,フラッシュナイフ,ヒアルロン酸,グリセオール,Coagulasparを用いた.【結果】AB群共,一括完全切除率100%に違いは無かったが,CSL-ESD群では,non-CSL-ESD群に比して,手技時間が有意に短く(40.5±25.3mmin vs 59.2mm±30.7mm),止血鉗子Coagulasparの使用回数も有意に少なく(1.3±1.3 vs 3.0±2.1 ),CSL-ESD群が優れていた.【結論】我々の開発したCSL-ESDでは,胃内でPULL/PUSH両方が出来,常に良好な剥離層を直視でき,又必要に応じては追加クリップによる他部位Liftingも可で,常に適度なCounter Tractionをかけつつ良視野を保つことができるため,本CSL-ESD法は,早期胃癌のESDを,簡便・安全・安価に,短時間で能率よく遂行でき臨床的に有用である. |