抄録 |
【背景】早期直腸癌に対する局所切除には時に外科的治療(経肛門的腫瘍切除以下TAR)も選択されていたが,平成24年より内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(以下ESD)が保険収載されてから,技術の安定とともにESDにて完治しうる病変が増えている.【目的】直腸腫瘍の臨床病理学的特徴を明らかにし,内視鏡治療と外科的治療の適応症例について比較検討する.【対象と方法】期間2005年から2012年までに当院で経験したLST848病変のうち,直腸(Ra-b)病変に限った142病変を対象とし,LST亜分類別評価,腫瘍径について検討した.さらに,肛門管にかかる病変(Rb-P)の治療成績について詳細に検討するために,Rb部位病変との比較検討を行った.【結果】直腸LSTの亜分類別の頻度はLST-G(Homo)8%,LST-G(MIX)69%,LST-NG(Flat)15%,LST-NG(PD)8%で,20mm以上がLST-Gは62%,LST-NGは12%認めた.直腸全体における局所切除別の成績は,ESDの術時間平均103.9分,偶発症と再発病変は認めていない.TARにおいて術時間平均は54.2分,後腹膜気腫1例,再発症例を1例認めた.Rb部位とRb-P部位の比較では,肉眼形態はLST-G:Rb50%.Rb-P100%.平均腫瘍径:Rb33.3mm.Rb-P46.4mm,平均術時間:Rb86.3分,Rb-P98.5分,病理組織診断はAdenoma:Rb15%,Rb-P部25%,M癌:Rb48%,Rb-P75%,SM-Deep:Rb12%,Rb-P0%,一括切除率:Rb95.7%,Rb-P91.7%.【結論】直腸にはESDの適応病変とされる20mm以上のLST病変が多く存在し,その治療成績は良好であった.さらに,Rb-P部位の病変においても形態はLST-G,浸達度は粘膜内癌までの病変が多く,ESDにて良好な治療成績を認めた. |