セッション情報 ワークショップ20(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

早期直腸癌治療における新展開

タイトル 外W20-5:

内視鏡治療と腹腔鏡手術をどちらも行う外科医からみた早期直腸癌の治療選択

演者 井上 隆(奈良県立医大・消化器・総合外科)
共同演者 藤井 久男(奈良県立医大・中央内視鏡・超音波部), 中島 祥介(奈良県立医大・消化器・総合外科)
抄録 【目的】多くの施設では内科医が内視鏡治療(ER)を,外科医が腹腔鏡手術(LAC)を担っていると思われる.当院では外科医がどちらも施行しており,cSMmassiveを積極的に疑う所見がなければERを選択している.当科の治療成績から早期直腸癌の治療選択を検討した.【方法】当科で2005年1月から2012年12月までに施行した直腸EMR71例/直腸ESD56例/直腸LAC96例の治療成績を解析した.【成績】EMR群;一括切除率78.3%,腫瘍径中央値12mm,合併症:穿孔0%で後出血2.7%,治癒切除率90.5%,リンパ節再発を1例認めた.ESD群;一括切除率96.4%,腫瘍径中央値39mm,所要時間中央値108分,合併症:穿孔5.4%で後出血3.6%,治癒切除率75.0%,局所再発を2例とリンパ節再発を1例認めた.初回治療がERであったのはpM/SMslight癌では58例中53例(91%)で,pSMmassive癌は26例中14例(54%)であった.ER後再発は4例中3例が非治癒切除の追加切除未施行例(EMR1例は合併症で,ESD2例は追加手術希望されず,経過観察となった)で,うち2例は再発後に手術施行も術後に遠隔転移を認めた.LAC群; LACを施行したpSM癌24例/carcinoid5例の計29例を最初からLAC施行した15例と,ER後に追加LAC施行した14例で成績を比較した.ともに永久人工肛門になった症例は認めず,ER後ではERによる腸管壁の線維化(EMRはsmまでが多く,ESDはmp以深が多かった)を認めたが,短期成績(手術時間/出血量/合併症など)に有意差は認めなかった.またER後に追加LAC施行した症例に再発は認めなかった.【結論】根治性を担保し,さらに患者のニーズやQOLを考慮した治療法の選択が必要となる中,早期直腸癌に対する治療方針としてcSMmassiveを積極的に疑う所見がなければERを選択してよいと考える.ただし,ER後の追加外科術式(可能であればLAC)を想定した治療戦略が必要であるため,ERとLACを行う医師の間で密な連携をとることと,追加手術の必要性のIC(特にESDでは追加手術を希望されない方が多かった)が重要である.
索引用語 内視鏡治療, 腹腔鏡手術