セッション情報 ワークショップ20(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

早期直腸癌治療における新展開

タイトル 外W20-6:

下部早期直腸癌に対する経肛門的腫瘍切除術の有用性

演者 井上 雄志(東京女子医大・消化器外科)
共同演者 大木 岳志(東京女子医大・消化器外科), 山本 雅一(東京女子医大・消化器外科)
抄録 【目的】ESDなど内視鏡技術の進歩に伴い,腫瘍径が大きくても一括摘除可能となってきたが,下部直腸腫瘍性病変の内視鏡摘除は後出血の危険が他の部位に比べ少なく,部位によっては疼痛もある.一方,SM癌のリンパ節転移は約10%と低率であることを考えれば腹腔鏡下に可能になったとはいえISR,APRは術後のQOLも考えると過大侵襲とも思われる.このことから全層切除も可能な経肛門的腫瘍切除術は有用な切除法であり,術後QOLもEMRと比べても遜色ない.方法としてTEMやMITASがあるが,前者は止血デバイスも電気メスを用いるため出血の不安があり,陽圧では全層切除は皮下気腫などの合併症もある.後者は自動縫合器を用いるため腫瘍からの深部断端のmarginが不正確である場合がある.今回パワーデバイスを用いた経肛門的腫瘍切除術の成績を示したい.【方法】全身あるいは腰椎麻酔下に行い,止血効果の高いハーモニック・スカルペル等を用いて切除を行う.肛門展開はE式開肛器またはローンスターリトラクターを用い,良好な視野を得るように調節する.この手技は出血なく容易に全層切除が可能であり,標本摘出後創部をイソジン溶液で洗浄しimplantationの予防を行い,創部を吸収糸にて縫合閉鎖する.【成績】現在まで37例に行い,平均手術時間は19分であった.SM以深癌は14例(SM massive癌12例,MP癌4例)であった.MP癌4例は本人の強い希望の1例も除き,併存症のため従来法の手術不可の症例であった. informed consentの上追加腸切除はせず,術後3例に化学療法,6例に化学・放射線療法を施行した.高齢者進行癌に対して術前に化学放射線療法を施行し経肛門的腫瘍切除で切除し得た症例も経験した.合併症は後出血を1例認めた.再発はMP癌の1例に多発肺・鼠径リンパ節転移を認めた.【まとめ】下部早期直腸癌に対する経肛門的腫瘍切除術は,リンパ節転移の可能性のあるSM massive以深癌の適応は慎重にすべきであるが,出血などの合併症は少なく,短時間での切除が可能であり有用と思われた.
索引用語 下部早期直腸癌, 経肛門的腫瘍切除術