セッション情報 ワークショップ20(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

早期直腸癌治療における新展開

タイトル 外W20-8:

早期下部直腸癌に対する術前化学放射線局所切除術の短期・長期成績について

演者 佐藤 宏彦(徳島大・消化器・移植外科)
共同演者 島田 光生(徳島大・消化器・移植外科), 栗田 信浩(徳島大・消化器・移植外科)
抄録 【はじめに】 欧米では,T1のみならず,T2直腸癌に対して化学放射線併用局所切除術が施行されているが,日本でのエビデンスは少ない.我々は下部直腸癌に対する無作為比較試験(第2相,UMIN000001704) を行い,S-1,UFT併用術前CRTの治療効果と安全性について報告してきた.今回,早期下部直腸癌に対するS-1,UFT併用術前CRT局所切除術の短期および長期成績について,新たな知見を得たので報告する.【対象・方法】2003年以降,下部直腸癌(T1/2)と診断され,CRTを施行した6例(fStage 0:3例,Stage I:3例)の短期および長期成績について検討した.【結果】背景因子は,男性4例,女性2例,年齢は52-78歳(平均63.2歳),癌占拠部位はRb:5例,P:1例,腫瘍の大きさは15-60mm(平均28.3mm),肉眼型は0-I型:1例,0-IIa型:3例,0-IIa+IIc型:2例,組織型はtub1:3例,tub2:3例,深達度はSM:4例,MP:2例であった.全例に局所切除を施行した.手術時間は38-198分(平均80.2分),出血量は5-100ml(平均47.2ml),術後在院日数は7-14日(平均9.8日)であった.術後合併症は認めず,肛門機能も良好であった.切除標本では腫瘍の大きさは0-60mm(22.0mm),深達度は0:1例,m:2例,sm:2例,mp:1例,組織学的Gradeは0:2例,1a:3例,3:1例,根治度はA:5例,B:1例であった.5年全生存率は100%,5年無再発生存率は80.0%,局所再発率は16.7%,遠隔再発率は0.0%,平均観察期間は9-72ヶ月(平均47.6ヶ月)であった.再発例の提示:2006年に局所切除術を施行した.HM1のため根治度Bであった.2008年に切除部位に再発を認め,腹腔鏡下超低位前方切除術を施行し,術後72ヶ月の現在,無再発生存中である.【結語】 早期下部直腸癌に対するS-1あるいはUFT併用術前化学放射線局所切除術は低侵襲で局所制御に優れ,予後も良好であり,標準治療となりうる可能性がある.
索引用語 局所切除術, 化学放射線療法