セッション情報 |
ワークショップ8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)
消化器疾患と胆汁酸
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タイトル |
外W8-7:ラット90%肝切除後胆汁鬱滞はNtcpの持続する発現抑制と局在変化およびMrp4の発現亢進による
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演者 |
三浦 卓也(弘前大・消化器外科DELIMITER青森市民病院・外科) |
共同演者 |
木村 憲央(弘前大・消化器外科), 袴田 健一(弘前大・消化器外科) |
抄録 |
【目的】肝切除後に遷延する胆汁うっ滞は、術後合併症や在院死亡につながるが、その機序は明らかでない。ラット90%肝切除モデルを用いて、胆汁酸輸送膜蛋白に注目し、機序を検討した。【方法】雄性Sprague-Dawley 6-7週齢ラットに対し70%、90%肝切除を施行し、切除直前0日、切除後1日、3日、7日の肝臓と血液を採取し、肝重量と血中胆汁酸濃度を測定した。90%肝切除において、切除直前0日を対照群として、Microarray analysis、quantitative real-time polymerase chain reaction (RT-PCR)、細胞膜分画のWestern blotting、免疫蛍光染色法を使用し、肝細胞胆汁酸輸送膜タンパク質であるmultidrug resistance protein 4 (Mrp4)、 bile salt export pump (Bsep)、sodium-dependent taurocholate cotransporting polypeptide (Ntcp) の各時点での発現変化を調べた。【成績】90%肝切除後1日と3日の肝重量は70%肝切除後と比べて有意に少なかったが、7日の肝重量は90%肝切除と70%肝切除で差が見られなかった。70%肝切除において、切除後1日で血中胆汁酸濃度は高値を示したが、3日には0日と同程度に戻った。一方90%肝切除において、7日まで遷延する高胆汁酸血症を認めた。RT-PCRとWestern blottingで、類洞側で胆汁酸を排泄するMrp4 は3日で発現上昇を認めた。類洞側で胆汁酸を取り込むNtcp は7日まで発現低下を認めた。細胆管側で排泄に働くBsepは変化を認めなかった。免疫染色でMrp4とBsepの局在は変化しなかったが、Ntcpは3日と7日には類洞側膜から消失した。3日ではPCNA陽性肝細胞が見られ、Ntcpは細胞質内に顆粒状に存在していた。Microarrayでは3日にProteasomeの発現が亢進し、Ntcpの分解が示唆された。【結論】大量肝切除後には、持続するNtcpの発現低下に伴った局在変化と、Mrp4の発現亢進が見られ、細胞毒性のある胆汁酸の細胞内濃度を下げることで肝再生を容易にする輸送膜蛋白の防御的機構が考えられ、これらの結果、高胆汁酸血症を生じることが示唆された。 |
索引用語 |
肝切除, 胆汁酸 |