セッション情報 ワークショップ21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

消化器癌腹膜播種の病態解明と新治療戦略

タイトル 外W21-2:

腹腔洗浄細胞診陽性胃癌に対する分子標的治療法の検討

演者 木下 春人(大阪市立大大学院・腫瘍外科学)
共同演者 八代 正和(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 平川 弘聖(大阪市立大大学院・腫瘍外科学)
抄録 【目的】胃癌において腹腔洗浄細胞診(CY)は胃癌病期進行度分類の一因子であり,CY1P0(腹腔細胞診陽性・腹膜播種陰性)はP1(腹膜播種陽性)と同様にStage IVに分類される.しかしながらCY1P0例には長期生存例も存在し,全例が腹膜播種再発をきたすわけではない.今回CY1P0症例を臨床病理学的に検討し,その予後予測因子を検索した.また,腹膜播種は腫瘍血管からの酸素供給がなく,低酸素環境が生じていると考えられる.そこで,低酸素環境において腹膜転移を形成する遊離癌胃癌細胞の特性を検討した.【方法】胃切除術を受けた進行胃癌1474例中遠隔転移陰性かつCY1P0症例91例を検討対象とし,予後と臨床病理学的背景の検討およびTGFβシグナルの下流であるリン酸化Smad2の発現との相関を免疫組織化学染色にて検討した.次に胃癌細胞株を低酸素環境で培養し,増殖因子受容体発現の変化をRT-PCRで検討し,腹膜基質成分への接着能を検討し,インテグリンの発現とTGFβR阻害剤の効果を検討した.【結果】CY1P0症例のなかでも,4型,低分化型,リン酸化Smad2高発現の胃癌は予後不良因子であった.4型胃癌細胞は低酸素培養により腹膜との接着能が亢進し,α2-,α3-,α5-インテグリン発現増強やTGFβR1,TGFβR2,CXCR4,EGFRの発現増強がその一因と考えられた.癌細胞と腹膜との接着はTGFβR阻害剤にて抑制された.【結論】CY1P0症例のなかで4型胃癌は他型の胃癌に比し腹膜再発を来しやすく予後不良である.その機序として4型胃癌細胞の低酸素環境下でのTGFβシグナルを介するインテグリン発現の亢進が関与しており,CY1P0症例の腹膜播種再発予防にTGFβR阻害剤が有用である可能性が示唆された.
索引用語 腹膜播種, TGFβR阻害剤