セッション情報 ワークショップ21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

消化器癌腹膜播種の病態解明と新治療戦略

タイトル 外W21-5:

腹腔内化学療法効果発現の理論的根拠とこれに基づいた新規薬剤の開発

演者 山口 博紀(東京大・腫瘍外科)
共同演者 北山 丈二(東京大・腫瘍外科), 渡邉 聡明(東京大・腫瘍外科)
抄録 腹膜播種は,依然として難治性・治療抵抗性の病態であり,標準的治療は未だ確立されていない.当科は,2005年より胃癌腹膜播種に対し,パクリタキセル(PTX)腹腔内投与の第I相および第II相臨床試験を進め,2011年より保険収載を目指し多施設共同の第III相臨床試験を実施ししている.これら臨床試験と併行し,腹腔内に投与された薬剤の腹膜播種に対する作用機序や新規薬剤の開発等の基礎研究をすすめてきた.胃癌腹膜播種動物モデルを用い,蛍光標識したPTXを静注あるいは腹腔内投与し,腹膜播種結節内のPTX分布を観察した.静注されたPTXは,腫瘍内部の血管周囲にごくわずかに集積がみられるのみであったが,腹腔内投与の場合,24時間後には腫瘍結節表面から少なくとも100μm内部にまで薬剤の浸透がみられた.また腹腔内投与した後,数日間にわたり血中のPTX濃度が有効域を越えることが確認され,腹腔がPTXのリザーバーとして機能していることが確認された.PTXが腹腔内化学療法に適している理由として,脂溶性物質であるPTXをクレモフォールによりミセル化しタキソールとして製剤化しているため,腹腔内滞留時間が長いことが挙げられる.両親媒性ポリマーであるPMB-30WにてPTXをミセル化させ,タキソールに比べさらに大型のミセルを作製し腹腔内投与したところ,タキソールと比較して播種結節のさらに深部まで到達し,広範囲に腫瘍細胞のアポトーシスがみられ,また,腹膜播種の抑制とマウスの生存率の上昇を確認した.一方,水溶性抗癌剤であるシスプラチンを架橋ハイドロゲルヒアルロン酸に含有させ腹腔内投与したところ,シスプラチン単剤に比べ,マウスモデルにおいてシスプラチンの腹腔内停溜時間の延長およびより高い抗腫瘍効果を確認したので合わせて報告する.腹腔内化学療法は腹膜播種病変に対して有用な治療手段であり,今後腹腔内化学療法に特化した薬剤やドラッグデリバリーシステムの開発が期待される.
索引用語 腹膜播種, 腹腔内化学療法