抄録 |
【目的】これまでのイメージング技術の著しい発展をもってしても,悪性腫瘍患者において試験開腹を回避できない例も多く,それに起因する合併症もいまだ無視できるものではない.従来の審査腹腔鏡技術はこれらの患者に多大な恩恵をもたらしその感度は73.7-89%程度と報告されるが更なる改善の余地を残している.今回我々はICG含有のリポソーム(ICG-L)をプローブとして利用し,近赤外光の技術を用いた新規イメージングについて基礎的検討を行ったので報告する.【方法】腹膜播種モデルとしてBalb/c nu/nu マウスを用いた.1×106 個のKATOIIIないしMKN45 cellを腹腔内に投与した.投与後12日目に100μlのICG-Lを尾静脈より静注した.24時間後にXenogen IVIS 200 small animal imaging system (Xenogen, Alameda, CA)を用いて撮像,さらに開腹後near-infrared fluorescence imaging system (Olympus Corp., Tokyo, Japan)にて腹膜播種へのICG-Lの取り込みを確認した.また,マウスより採取した腹膜播種を全身麻酔下,豚腹腔内に散布し,通常光および近赤外光でnear-infrared fluorescence imaging systemを用いて観察を行った.【結果】マウス腹膜播種モデルにおいてIVISによる開腹前での腹膜播種の同定が可能であった.さらにnear-infrared fluorescence imaging systemを用いることで1mm程度の微小な腹膜播種も容易に同定が可能であった.また豚モデルを用いた審査腹腔鏡においてICG-Lを含んだ腫瘍の同定は近赤外光を用いることで極めて容易となることが確認された.【結論】ICG-Lを利用した,near-infrared fluorescence imaging systemによる審査腹腔鏡は従来法に比べ腹膜播種同定率を改善する可能性が示唆された.また,今回使用したリポソームに種々の抗癌剤を封入することは可能であり,今後腹膜播種の新規治療法確立に向けて検討を進める予定である. |