セッション情報 ワークショップ21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

消化器癌腹膜播種の病態解明と新治療戦略

タイトル 外W21-8:

5-アミノレブリン酸を用いたマウス胃癌腹膜播種モデルに対する光線力学的療法について

演者 村山 康利(京都府立医大・消化器外科)
共同演者 市川 大輔(京都府立医大・消化器外科), 大辻 英吾(京都府立医大・消化器外科)
抄録 【目的】腹膜播種を伴う胃癌患者の予後は悪く,新規抗癌剤を用いてもその奏効率は低いのが現状である.そこで,新規治療法の開発に期待が寄せられている.光線力学的療法(PDT: Photodynamic therapy)は,光感受性物質の投与と光照射によって誘導される細胞死を利用した治療法であり,手術,化学療法,放射線療法などとの併用も可能である.5-aminolevulinic acid(5-ALA)は内因性のアミノ酸でありそれ自身は蛍光物質ではないが,投与する事により癌細胞内で蛍光物質であるprotoporphyrinIX(PpIX)に代謝され,蓄積するという性質を有する.そこで,ヒト胃癌細胞株,大腸癌細胞株ならびにマウス腹膜播種モデルに対するALA-PDTを行い,その有効性の検討を行った.【方法】ヒト胃癌細胞株,大腸癌細胞株に3種類のLED (light emitting diode) 光源 (violet : 410 nm, green : 525 nm, red : 635 nm)を用いてALA-PDTを行い,WSTアッセイで効果判定を行った.また,EGFPをラベルしたMKN-45細胞を用いて各グループ5匹ずつマウス胃癌腹膜播種モデルを作製し,腹膜播種結節に対しても同様にALA-PDTを行った後,標的結節の壊死範囲をHE染色で評価し,ALA-PDTの治療効果を判定した.【成績】各種細胞株に対する抗腫瘍効果はviolet,green,red LEDの順であり,いずれもコントロールと比較し有意差をもって治療効果を認めた.また,癌腫が変わってもその治療効果は同等であった.腹膜播種モデルでもコントロールと比較し優位に高い抗腫瘍効果を認めた.violetとgreen LEDは同等の抗腫瘍効果を示し,これらの効果はred LEDよりも有意に高かった.【結論】ALA-PDTはヒト胃癌細胞株,大腸癌細胞株と腹膜播種モデルにおいて有効であり,胃癌腹膜播種に対する新たな治療法の選択肢の一つになりうると考えられた.
索引用語 PDT, 腹膜播種