セッション情報 ワークショップ21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

消化器癌腹膜播種の病態解明と新治療戦略

タイトル 外W21-9:

胃癌腹膜播種に対するICGミセルを用いた新規診断法と光線力学療法に関する実験的検討

演者 辻本 広紀(防衛医大・外科)
共同演者 守本 祐司(防衛医大・分子生体制御学), 長谷 和生(防衛医大・外科)
抄録 【緒言】胃癌の腹膜播種に対する治療法は,化学療法が中心であるが,その奏効率や有害事象の観点から,必ずしも有効な治療法とは言い難い.今回我々はICGの高分子ミセル化を図ったDDS型超分子を開発し(ICGm),ICGmを用いた診断・治療への応用を視野に,胃癌腹膜播種モデルを用いて実験的に検討した.【対象と方法】1:8週齢,雄性ヌードマウスを用い,胃癌細胞株(MKN45)を1x107細胞/500μlを腹腔内投与した.モデル作成3週後に粒子径を30-40nmに調整したICGm (1mg/100μl;島津製作所より供与)を尾静脈より静注し,72時間後に高感度CCDカメラを用いて,腹壁から,あるいは開腹時に,ICGの集積を観察した.2:腹膜播種モデルを,ICGmを静注した治療群(n=8)と通常のICGを静注した対照群(n=8)に分け,静注48時間後に腹壁より808nmの半導体レーザーを用いて,照射強度280mW/cm2,照射時間1000秒,照射エネルギー280J/cm2の条件で光線力学療法(PDT)を行い,生存期間を2群間で比較した.【結果】1:モデル作成4週目には,腹腔内に無数の小結節と血性腹水を認め,これらは病理組織学的に胃癌腹膜播種巣であることが確認された.腹壁からの観察において小結節としてICGの集積を認めた.開腹後の観察では,より鮮明となり,開腹時の肉眼的観察で指摘された播種巣に一致して,ICGの集積を認めた.2:PDT後の生存期間を検討したところ,治療群の治療後のMSTが32日であり,対照群の17日と比較して有意に生存期間が延長した(Log-rank p<0.05).また,治療群での腹膜播種巣の総重量は1.1±0.3gと,対照群の1.6±0.4gと比較して有意に減少していた.【考察】本法ではICG蛍光を利用した腫瘍の存在診断のほか,ICGに起因する光増感効果により光線力学治療における腫瘍殺傷効果が期待でき,癌腫を問わず,腹膜播種巣のみをTargetとした新しい診断・治療法として臨床応用への可能性が期待された.現在,ラット腹膜播種モデルを作成し,腹腔鏡によるPDT効果を検証中である.
索引用語 腹膜播種, 光線力学療法