セッション情報 ワークショップ21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

消化器癌腹膜播種の病態解明と新治療戦略

タイトル 外W21-10:

大腸癌腹膜転移に対する温熱化学腹膜灌流療法(HIPEC)の有効性の検討

演者 五井 孝憲(福井大・1外科)
共同演者 片山 寛次(福井大・1外科), 山口 明夫(福井大・1外科)
抄録 【目的】大腸癌において腹膜転移の頻度は低いが予後不良とされ,現在まで確立された有効な治療法ない.当科では腹膜転移を伴う大腸癌症例(他臓器転移に関しては無いまたは切除術可能)に対し,郭清を伴う原発巣の切除ならびに可及的に腹膜転移巣の切除を行った後,術中温熱化学腹膜灌流(HIPEC)を行なっている.これまでの治療成績とさらに効果判定因子について報告する.【対象】腹膜転移を有した大腸癌30例.【方法】(1)手術時に郭清を伴う原病巣切除ならびに腹膜転移巣を可及的切除を行なった後,開腹に創部にリングリトラクターを装着して灌流するスペースを確保する.灌流する薬剤は,生食2 LにCDDP,MMC,Etoposidegを恒温槽で48℃に加温し,腹腔内を灌流,最終的にThermal dose 43℃ 40分となるようにした.(2) HIPEC施行例の手術時に採取した腹膜転移巣に対して,Mucinファミリー(大腸粘膜において防御機能を示す)について,MUC1,2,3,4,5ACの抗体を用いた免疫組織化学染色を行い,その発現と生存率に関して検討を行なった.【結果】(1) 全HIPEC療法群における3年生存率は39.3%,5年生存率は33.7%,50%生存期間は26ヶ月であった.そのうちP1/P2症例では3年,5年生存率ともに50%,50%生存期間は31ヶ月,P3症例では3年生存率29.1%,5年生存率ともに14.5%,50%生存期間は14ヶ月であった.(2)Mucinファミリーの免疫組織化学染色では,MUC2発現陽性症例での50%生存期間は10ヶ月,3年生存率は10.4%,5年生存率0%であったのに対して,MUC2発現陰性症例における50%生存期間は61ヶ月,3年生存率は60.3%,5年生存率51.7%と有意にMUC2発現陰性症例が良好であった.その他のMUC発現には有意差は無かった. 【結語】腹膜転移を伴う大腸癌では郭清を伴う原発巣ならびに可及的な腹膜転移巣の切除を行った後,HIPEC療法を施行することは生存率の延長を可能とし,さらに有効性の指標として癌細胞におけるMUC2発現が考えられた.
索引用語 大腸癌, 腹膜転移