セッション情報 |
ワークショップ22(消化器外科学会)
膵炎合併・既往例に対する外科治療の現状と課題
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タイトル |
外W22-2:重症急性膵炎後の膵頭十二指腸切除術例の検討
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演者 |
松本 逸平(神戸大・肝胆膵外科) |
共同演者 |
新関 亮(神戸大・肝胆膵外科), 具 英成(神戸大・肝胆膵外科) |
抄録 |
【背景と目的】膵頭部領域の悪性腫瘍では術前随伴性膵炎や胆管炎の合併例をしばしば経験する.特に重症急性膵炎(SAP)発症例では,適切な手術時期の決定や高度の線維性癒着,仮性嚢胞形成等に対する手術時の対応,合併症対策が課題である.今回,SAP発症後膵頭十二指腸切除術の手術手技の工夫を提示し,自験例の短期成績につき検討した.【対象と結果】対象はSAP発症後膵頭部領域の悪性腫瘍6例.年齢中央値69歳(44-80歳),男性5例,女性1例.原疾患は胆管癌5例,IPMC1例.SAPの原因は,胆管癌例はすべて術前ERCPによるもので,IPMC例は原疾患によるものであった.SAP発症時のCT grade はすべて2で,治療はすべて他院で行われ,手術目的で当科へ紹介となった.SAP発症より手術までの期間は中央値119日(92-215日)であった.手術時間,出血量の中央値は839分(662-659分),1600ml(790-3800ml)であった.1例では術中所見により膵全摘を余儀なくされた.術後Grade Bの膵液瘻を4例,腹腔内膿瘍1例,胆汁漏1例に認め,術後在院日数中央値は40日(26-132日)であった.【手術手技】癒着が高度な局面では剥離・切離操作に生食滴下式バイポーラを使用する.バイポーラ鉗子は先端が細く鋭なものを用い,組織を少しずつ鋏み通電しつつ剥離,切離を進める.出力設定を高く設定することで切離操作も可能となる.また生食滴下を併用することで術野からの小出血に対しても迅速かつ確実に止血が可能で,良好な術野を確保しつつ,周辺組織の損傷を最小限にできることが利点である.【結語】SAP後PDは技術的難易度が高く,術後合併症は高率であった.術中の高度癒着,易出血性に対し,生食滴下式バイポーラは有用である.悪性腫瘍では早期手術が望まれるが,手術の安全性を考慮した炎症所見の鎮静化と原疾患の悪性度により手術時期を決定する必要がある.周術期は特に感染のコントロールが重要である. |
索引用語 |
重症急性膵炎, 膵頭十二指腸切除術 |