セッション情報 ワークショップ22(消化器外科学会)

膵炎合併・既往例に対する外科治療の現状と課題

タイトル 外W22-3:

膵炎合併膵切除術の問題点

演者 橋本 大輔(熊本大・消化器外科)
共同演者 近本 亮(熊本大・消化器外科), 馬場 秀夫(熊本大・消化器外科)
抄録 <背景>膵炎をおこすと膵と周囲組織に線維化と癒着をおこし,手術操作が困難となる.我々は膵炎を伴った膵切除手術の問題点を検討した.<方法>2012年4月から2013年3月まで当院において亜全胃膵頭十二指腸切除術(SSPPD)30例,膵体尾部切除(DP)17例,膵中央切除(MP)1例,SSPPD+DP 1例,膵全摘術(TP)3例の計52例の膵切除手術を行なった.手術因子,術後経過等を解析した.<結果>術後在院死亡はなかった.膵炎及び周囲組織との癒着を伴った症例はSSPPD 6例,DP 1例,MP1例とSSPPD+DP1例の計9例(17.3%)であり,膵頭部領域に病変がある症例に多かった.DP,MP及びSSPPD+DP症例の対象疾患はそれぞれ仮性膵嚢胞,転移性膵癌及び膵頭部癌と腫瘤形成性膵炎の合併であった.SSPPD+DP症例には術後膵液瘻(POPF) Grade Cが発生した.SSPPD症例を通常群24例と膵炎群6例に分けて比較検討した.対象疾患は通常群で膵癌10例(41.7%),胆管癌5例(20.8%),IPMN 5例(20.8%),乳頭部癌2例(8.3%),膵神経内分泌腫瘍1例(4.2%),solid pseudo- papillary tumor 1例(4.2%)であり,膵炎群で膵癌4例(66.7%),腫瘤形成性膵炎1例(16.7%),IPMN 1例(16.7%)で,膵炎群で膵癌が多い傾向にあった.通常群はhard pancreas 9例,soft pancreas 15例で,膵炎群は全例hard pancreasであり有意差があった.主膵管径は通常群4(3-7)mmに対して膵炎群5(4-6)mmと大きい傾向にあった.手術時間は通常群457(291-840)分,膵炎群490(437-555)分で有意差はなかった.手術出血量は通常群783(77-3623)gに対して膵炎群1568(655-1902)gと多い傾向にあった.術後合併症は通常群7例(29.2%)と膵炎群2例(33.3%)に発生した.その中でPOPFは通常群1例(Grade C),膵炎群1例(Grade C)に発生した.<まとめ>腫瘤形成性膵炎や膵頭部癌で主膵管が大きい症例に膵炎による癒着を伴いやすい傾向にあった.手術出血量が多く,Hard pancreasであるにも関わらず術後合併症を伴いやすいので,慎重な剥離,吻合操作を行うべきである.
索引用語 膵炎, 手術