セッション情報 ワークショップ22(消化器外科学会)

膵炎合併・既往例に対する外科治療の現状と課題

タイトル 外W22-4:

教室における膵炎合併膵頭十二指腸切除術の検討

演者 藤森 聰(昭和大・消化器・一般外科)
共同演者 村上 雅彦(昭和大・消化器・一般外科), 青木 武士(昭和大・消化器・一般外科)
抄録 【はじめに】急性膵炎既往例,慢性膵炎合併例は時に剥離層の同定が困難で手術の進行に難渋し,高度の線維化に伴う組織の脆弱性に対する配慮を行っても,術後合併症を呈する.今回,膵頭十二指腸切除術の膵炎合併例に着目し検討を行った.【対象・方法】2010年1月から2012年12月まで経験した膵頭十二指腸切除術45例のうち,膵炎合併症例7例.その内訳は膵癌に合併した閉塞性膵炎3例,術前ERCP膵炎を併発した胆管癌2例,慢性膵炎2例であった.非膵炎合併症例と比較検討し,術前CT所見,手術時間,出血量,術中難渋した手技,術後合併症について比較検討した.【結果】術前CT所見では,膵炎合併例は石灰化や膵石,主膵管拡張,膿瘍腔の形成を認め.線維化が強い硬化膵は造影効果が低く描出された.膵炎合併例は炎症性に組織が硬く剥離が困難で,非合併例に比べ手術時間が若干長い傾向が見られたが有意差はなく(511分vs 440分).出血量にも差はなかった (716g vs 816g).手技に関しては,膿瘍腔ならびにその周囲脈管の処理に難渋するケースを2例.膵下縁の剥離にて上腸間膜静脈が同定できず,門脈前面のトンネリングを行えないために膵離断を先行させる症例を2例認めた.術後合併症においては,ISGPF gradeBの膵液瘻は少ない傾向が見られたが(0% vs 13%),膵内に膿瘍腔を形成していた2例はISGPF gradeCの膵液瘻を併発.特に慢性膵炎の1例では,術後4病日に膵液瘻に伴い胃十二指腸動脈に仮性動脈瘤を形成し,ドレーンより出血.IVR下の血管閉塞術にて止血.その後,後腹膜膿瘍形成し再出血となり,19,21,22病日に再三にわたり塞栓術を必要とした.83病日目に無事退院した.【まとめ】膵炎合併膵頭十二指腸切除術においては,術中の緻密な手術操作で膵炎を認めない症例とほぼ同等の成績が得られるが,膵内に膿瘍腔を認めるような感染合併症例においては術後の的確な合併症対策が重要である.
索引用語 膵頭, 膵炎合併