抄録 |
【はじめ】 近年,上部および下部消化管内視鏡の細径モデルが普及し診断のみならず様々な治療にも応用されている.胆膵領域においては極細径上部内視鏡を用いた直接的経口胆道鏡検査(PDCS)の有用性が注目されている.また,術後再建腸管症例の胆道アプローチにはダブルバルーン内視鏡や小児用大腸内視鏡(PCF)が用いられることが一般的であるが,当院では新たな試みとして挿入性に優れた新型細径大腸内視鏡であるPCF―PQLを使用しRoux-en-Y(RY)再建症例のERCPを施行しており併せて報告する.【症例・成績】 PDCSは巨大胆道結石・合流部結石・肝内結石の治療およびバルーン造影が施行できない胆管拡張症例の遺残結石確認目的に48例で施行した.内訳は切石18例,胆道内観察30例であった.胆管挿管成功率は79.1%(38/48)であり,肝内胆管までの挿入成功率は62.5%(30/48)であった.成功率は非術後胃で80%,B-I再建で50%,B-II再建で90.9%,RY再建75%であった.切石は主に電気水圧衝撃波(EHL)を用い,平均処置回数は2回(1~6回),平均処置時間は58.6分(10~120分).いずれも完全切石が可能であり,偶発症は認めなかった. PCF-PQ260Lを使用したRY再建症例への胆道アプローチについては3例(胃全摘後RY1例,残胃RY2例)に対して施行し,全例で乳頭到達可能であった.残胃RY症例ではDBE用オーバーチューブを併用しシングルバルーン法でPCF-PQ260Lを挿入し乳頭部到達後,内視鏡を入れ替えずに金属ステント留置が可能であり動画で報告する.【結語】細径内視鏡は消化管検査の苦痛を軽減することを目的に開発された内視鏡であるが,細径化に伴い胆膵領域においても応用が可能であった.しかし,胆管挿管率は十分とは言えず,鉗子口径により処置具の制限も加わる現状である.高齢社会においてより低侵襲な治療が可能となることは極めて重要であり,さらなる内視鏡および処置具の改良や方法論の確立が期待される. |