抄録 |
【目的】当施設では,覚醒が早く再鎮静のないプロポフォールを鎮静薬として使用した上部消化管内視鏡検査(EGD)および下部消化管内視鏡検査(CS)を施行しているのでその有用性を報告する.【方法】対象は当院にてプロポフォールを静脈内投与して診断目的のEGDおよびCS(ポリペクトミー施行例も含む)を施行した症例.初期投与用量は年齢を基準に決定し,十分な鎮静効果を得るため原則としてEGDでは最大で120mg,CSでは最大で200mgまで追加投与した.全例で心拍数,SpO2のモニタリングを施行し,検査後の覚醒状態と偶発症をprospectiveに検討した.【結果】2006年1月より2012年12月の期間にEGDを施行した症例は63,972例(男36,666例,平均年齢59歳).そのうちの39,022例(61%)がプロポフォール20-40mgの1回投与のみで施行可能で,平均使用量は49mg,若年者および男性で使用量が有意に多かった.同期間にCSを施行した症例は,12,606例(男6,894例,平均年齢65歳).99.9%の症例(12,594例)は盲腸到達が可能でプロポフォールの平均使用量は98mg.男女で使用量に有意差を認めなかったが,20-40歳の症例は61歳以上に比べて使用量が有意に多かった(20-40歳114±5 mg vs. 61歳以上; 89±3mg, p<0.0001).検査中,酸素投与を必要とした症例は,EGD0.26%(168例),CS0.2%(30例)に認めたが,換気マスクや気管挿管を必要とした症例は1例もなく,脱抑制は,EGD 1.9%(1,220例),CS 1.2%(153例)に認めた.EGDでは,99.9%の症例が,CSでは,100%の症例が注射後60分以内に検査前の状態に回復し,出血,穿孔,肺炎などの偶発症はまったく認めなかった.また,これまで検査後24時間以内に交通事故などの有害事象に遭遇した症例の報告はない.【結論】EGDおよびCSにおいて,プロポフォールを使用した鎮静法は,検査中のみならず検査後の安全性,利便性を考慮すると極めて有用な検査法と考えられた. |