セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(基礎)

タイトル 消P-1:

ベバシツマブと非環式レチノイドの併用による肝癌細胞増殖抑制効果

演者 久保田 全哉(岐阜大・消化器病態学)
共同演者 清水 雅仁(岐阜大・消化器病態学), 馬場 厚(岐阜大・消化器病態学), 寺倉 大志(岐阜大・消化器病態学), 大野 智彦(岐阜大・消化器病態学), 河内 隆宏(岐阜大・消化器病態学), 白上 洋平(岐阜大・消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大・消化器病態学)
抄録 【目的】肝細胞癌は未だに予後不良であり有効な予防治療法の開発が求められている.我々は今までに合成レチノイドの一つである非環式レチノイド(ACR)およびACRと種々の併用薬による肝癌化学予防について検討してきた.また大腸癌,非小細胞肺癌,乳癌に臨床応用されている抗血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体,ベバシツマブは,VEGF受容体を阻害して主に癌の血管新生を抑制し抗癌作用をもたらす.VEGFシグナルはヒト肝癌細胞の腫瘍増殖において重要な役割を果たしている.我々はACRとベバシツマブの併用による肝癌細胞増殖抑制効果についてヒト肝癌細胞株HuH7を用いて検討した.【方法】6週齢ヌードマウス(BALB/c Slc-nu/nu)にヒト肝癌細胞株HuH7を皮下注し異種移植片を作成した.マウスを対照群,ベバシツマブ投与群,ACR投与群,両剤併用群の4つのグループに分け,8週齢時より投薬開始し13週齢時に解剖した.【結果】ヌードマウスに作成した異種移植片は,ベバシツマブおよびACR投与により対照群と比較して腫瘍縮小傾向を認めた.また両剤併用群は対照群およびそれぞれ単剤投与群と比較して有意に腫瘍縮小を認めた.ベバシツマブとACRは血清VEGF濃度を低下させる傾向を認めた.異種移植片から抽出した蛋白において,ベバシツマブとACR はリン酸化型Akt蛋白の発現を低下させた.MIB1,PCNAによる免疫染色では,両剤投与群では対照群と比較して腫瘍細胞陽性率の有意な低下を認めた.TUNEL染色では両剤投与により対照群と比較して陽性細胞の有意な増加を認めた.【考察・結論】HuH7異種移植片に対する腫瘍増殖抑制効果について,ベバシツマブとACRは両剤の併用により有意な抑制効果が認められた.その機序としてはPI3K/Aktシグナル経路を抑制することによる細胞増殖抑制,アポトーシスの誘導が考えられた.これらの結果はベバシツマブとACRによる併用肝発癌化学予防の可能性を示唆するものと考えた.
索引用語 肝細胞癌, レチノイド