セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(基礎)

タイトル 消P-4:

Wntシグナル転写因子TCF-4によるBcl-xL発現制御

演者 古賀 浩徳(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米大先端癌治療研究センター・肝癌部門)
共同演者 中村 徹(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米大先端癌治療研究センター・肝癌部門), 矢野 博久(久留米大・病理学), 上野 隆登(朝倉医師会病院), 鳥村 拓司(久留米大先端癌治療研究センター・肝癌部門), J.R. Wands(Liver Research Center, Brown University), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科DELIMITER久留米大先端癌治療研究センター・肝癌部門)
抄録 【背景と目的】Wntシグナル系はCancer Stem Cell (CSC)の特異な形質を精緻に制御している.最近,我々はその中枢転写因子T-cell factor (TCF)-4のisoformをヒト肝癌細胞株から14種クローニングし(Exp Cell Res 2010),その構造機能相関を解析している.TCF-4には転写活性を鋭く制御する「SxxSS」モチーフがあり,それを「欠いたTCF-4J isoform」と「有するTCF-4K isoform」のヒト肝細胞癌における発現様式が異なることから,このモチーフが肝発癌過程に深く関与することを明らかにしてきた(PLoS ONE 2012).本研究では,CSC形質の一つである抗癌剤耐性の発現機構に「SxxSS」モチーフがいかなるインパクトを与えているかについて検討した.【材料と方法】細胞:ヒト肝細胞癌細胞株(HAK-1A, HAK-1B)ほか.蛋白解析:Western blot,FCM.mRNA解析:qPCR.機能解析:アポトーシス,site-directed mutagenesis,Lucアッセイ,ChIPアッセイ.【結果】HAK-1AベースのTCF-4JおよびK過剰発現細胞(J細胞,K細胞)を樹立した.対照を含めた3種の細胞において,K細胞が最もドキソルビシン(DXR)に耐性を示した.細胞周期に差異はなかった.そのK細胞ではMDR-1の発現亢進は見られなかったものの,Bcl-xLの発現増強が認められた.その機序としてTCF-4がbcl-xLのプロモーター領域に結合していること,さらにその結合がSxxSS先頭のSをAに置換したTCF-4K-mutantでは減弱することがChIPによって明らかになった.実際,K-mutant細胞ではBcl-xLの発現が低下しDXR処理によるアポトーシスが増加した.LucアッセイでもTCF-4Kは最も高いbcl-xLプロモーター活性化能を示した.【結論】TCF-4 isoformは,SxxSSモチーフ依存性にBcl-xLの発現調節をしていた.このことから,CSCが示す抗癌剤耐性の機序解明とその克服にはWntシグナル系からのアプローチも重要であると考えられた.
索引用語 Wnt, 癌幹細胞