セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(B型肝炎)

タイトル 消P-13:

HBVキャリアにおける,自然経過によるHBs抗原陰性化症例の検討

演者 橋本 直明(東京逓信病院・消化器科)
共同演者 奴田 絢也(東京逓信病院・消化器科), 田顔 夫佑樹(東京逓信病院・消化器科), 水谷 浩哉(東京逓信病院・消化器科), 大久保 政雄(東京逓信病院・消化器科), 小林 克也(東京逓信病院・消化器科), 関川 憲一郎(東京逓信病院・消化器科), 光井 洋(東京逓信病院・消化器科), 山口 肇(東京逓信病院・内視鏡センター)
抄録 【目的】HBVキャリアの治療目標をHBs抗原の陰性化に置く考え方がある一方,わが国のHBVキャリアでは自然経過によるHBs抗原陰性化は少ないとされる.今回我々は,自然経過によるHBs抗原陰性化の自験症例について検討した.【対象・方法】過去8年間のHBVキャリア自験例81例中,自然経過でHBs抗原が陰性化した10例を対象とした(陰性化率1.5%/年).HBVマーカー,コア関連抗原(crAg),HBV DNA等を測定した.【結果】1)症例は男女比は9:1.現在の年齢は40~83歳.2)HBs抗原陰性化に気付かれた年齢は37~82歳(平均60歳11カ月),30歳台と40歳台が1人ずつ,50歳台が2人,60歳台が4人,80歳台が2人だった.3)HBs抗原陰性化とHBV DNA陰性化では,前者を先に指摘された者3人,後者を先に指摘された者4人,両者同時が2人,判定不能が1人だった.4)経過中男性例2例に肝細胞癌(HCC)を認め,両例とも初回は肝切除術を受け,非癌部は若干の肝線維化を認め,慢性肝炎の為と考えられた.再発に対して1例は再切除,他例はラジオ波焼灼療法(RFA)を受けた.前者は再切除の後で,後者は初回のRFA の後に,HBs抗原が陰性化した.5)全員,HBs抗原またはHBV DNAの陰性化を指摘される数年前から無症候性キャリアの状態で,HCC例以外は画像診断上,慢性肝障害は疑われなかった.6)HBs抗原陰性化時,HBe抗原は全員陰性.HBe抗体は7例で抑制率100%,他はそれぞれ,97%, 94%, 79%と全員陽性だった.HBV DNAも全員陰性だった.7)最新の採血で,HBs抗体価は5例が100 mIU/ml以上,3例が10~100 mIU/mlといずれも陽性,2例は陰性だった.HBcrAgは測定した5例で3.0 LogU/ml未満だった.【考察】自験例では肝硬変化以前に自然経過によるHBs抗原陰性化を認めた.無症候性キャリアでHBe抗原陰性・HBe抗体陽性で,HBs抗原或いはHBV DNA或いはHBcrAgが減少中の症例では,自然経過によるHBs抗原の陰性化が期待できると考えた.
索引用語 HBs抗原陰性化, 自然経過