セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(腫瘍5)

タイトル 消P-65:

肝細胞癌に対するミリプラチンを用いた肝動脈化学塞栓療法での組織内シスプラチン濃度の検討

演者 宮川 昌巳(亀岡市立病院・消化器科)
共同演者 安居 幸一郎(京都府立医大・消化器内科), 高島 英隆(長浜市立湖北病院・内科), 宮澤 一博(長浜市立湖北病院・外科), 落合 登志哉(京都府立医大・消化器外科), 向所 賢一(滋賀医大・分子診断病理学), 天池 寿(亀岡市立病院・外科), 上田 和茂(亀岡市立病院・消化器科), 森川 淳一郎(長浜市立湖北病院・内科), 大辻 英吾(京都府立医大・消化器外科), 吉川 敏一(京都府立医大・消化器内科)
抄録 【目的】進行肝癌や多発肝癌に対する肝動脈化学塞栓療法(以下 TACE)では腫瘍や癌の状態に応じて使用できる抗癌剤の総量や,個々の肝癌への集積に限界が生じる.薬剤を癌部に選択的に集積させ,非癌部への影響を軽減することが重要だが,ミリプラチンを用いたTACE後の肝組織内での薬剤濃度に関する基礎的なデータは乏しい.今回我々は,ミリプラチンを用いたTACE後に肝切除となった症例の癌部,非癌部のシスプラチン濃度と,抗腫瘍効果に重要と思われるDNA結合シスプラチン濃度を測定し,癌部への集積性を検討した.【方法】初発,単発例の肝細胞癌で,ミリプラチンによるTACE後に同病変の外科切除を行った4例を対象とした.男性2例,女性2例,年齢71.8±3.2歳,HCV陽性,Child-Pugh A ,中分化型肝細胞癌で腫瘍径3.3±1.2cmであった.TACEでは塞栓物質にジェルパートを使用した.ミリプラチン投与量は69±28.5mgで, TACE後34.5±1.3日で肝切除を施行した.切除標本の癌部と非癌部組織のシスプラチンとDNA結合シスプラチンの濃度をICP質量分析法により測定した.【成績】シスプラチン濃度は癌部で730±350μg/g,非癌部で16±9.2μg/gと,癌部が非癌部に比べ50±20倍と有意に高値であり,DNA結合シスプラチン濃度も癌部で54±16pg Pt/μg DNA,非癌部で13±13 pg Pt/μg DNAと癌部が非癌部に比べ7.6±5.3倍と有意に高値であった.癌部でのシスプラチン濃度とDNA結合シスプラチン濃度に相関は認められなかった.【結論】ミリプラチンを用いたTACEではシスプラチンは癌部に選択的に集積し,DNA結合シスプラチン濃度が上昇することで,非癌部への影響は少なく,癌部に特異的に効果を発揮していることが示唆された.
索引用語 肝細胞癌, ミリプラチン