セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(腫瘍5)

タイトル 消P-67:

肝癌幹細胞治療薬としてのジスルフィラムの有用性の検証

演者 鈴木 英一郎(千葉大附属病院・消化器内科)
共同演者 千葉 哲博(千葉大附属病院・消化器内科), 金井 文彦(千葉大附属病院・消化器内科), 斉藤 朋子(千葉大附属病院・消化器内科), 叶川 直哉(千葉大附属病院・消化器内科), 元山 天佑(千葉大附属病院・消化器内科), 小笠原 定久(千葉大附属病院・消化器内科), 大岡 美彦(千葉大附属病院・消化器内科), 太和田 暁之(千葉大附属病院・消化器内科), 岩間 厚志(千葉大大学院・細胞分子医学), 横須賀 收(千葉大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】アルデヒド脱水素酵素阻害剤ジスルフィラム(DSF)は嫌酒薬として使用される一方,多くの癌腫において抗腫瘍効果と示唆されるが肝癌に対しては不明である.今回,肝癌幹細胞に対する同薬剤の効果を明らかにすることを目的とした.【方法】DSF処理した肝癌培養細胞Huh1及び7細胞の培養系のアッセイを行うとともに,xenograft modelにおける抗腫瘍効果を検討,さらにフローサイトメトリーを用いてHuh1及び7細胞のEpCAM+細胞を純化し,sphere formation assay,免疫染色,マイクロアレイ解析などを行なった.【結果】DSF処理により,用量依存性に肝癌細胞の増殖抑制とアポトーシスの誘導が認められたが,ALDH1および 2をdouble knockdownした肝癌細胞のstable transfectantでは,増殖能,sphere形成能に変化は見られなかった.また,DSF処理した肝癌細胞では,EpCAM+細胞あるいはCD133+細胞分画が減少すると共に,これらの細胞のsphere形成能の抑制,sphere内のAFP,EpCAM発現細胞の減少などが認められた.こうした所見は,抗酸化剤NACあるいはp38特異的阻害剤の併用により,高度に改善された.DSF処理したEpCAM+細胞を用いたマイクロアレイ解析では,p38-MAPK pathwayのgene setがenrichされるも,proteasome pathwayのgene setはenrichされなかった.さらに,肝癌標的治療分子としての有用性が報告されているGlypican3 (GPC3)遺伝子が有意に発現抑制されていることを見出した.GPC3をノックダウンしたEpCAM+細胞では増殖抑制とアポトーシスの誘導が認められ,さらにsphere formation assayでは,sphere形成能の抑制と自己複製能の低下が認められた.【結論】ジスルフィラムは,ROS-p38 pathway依存的または非依存的に,肝癌幹細胞の自己複製を阻害し,造腫瘍活性を抑制するものと考えられた.肝癌幹細胞を標的とした新規治療薬として,ジスルフィラムが有用である可能性が示唆された.
索引用語 癌幹細胞, ジスルフィラム