セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(腫瘍7)

タイトル 消P-78:

肝平滑筋肉腫の一例

演者 伊藤 聡子(島根県立中央病院・消化器科)
共同演者 中瀬 真実(島根県立中央病院・消化器科), 上野 さや香(島根県立中央病院・消化器科), 泉 大輔(島根県立中央病院・消化器科), 矢崎 友隆(島根県立中央病院・消化器科), 園山 隆之(島根県立中央病院・消化器科), 宮岡 洋一(島根県立中央病院・内視鏡科), 藤代 浩史(島根県立中央病院・内視鏡科), 高下 成明(島根県立中央病院・消化器科), 今岡 友紀(島根県立中央病院・消化器科)
抄録 肝原発の間葉系腫瘍は肝腫瘍全体の1-2%である.肝平滑筋肉腫の報告は他臓器からの転移性腫瘍がほとんどで,肝原発の平滑筋肉腫の報告は50例未満で非常にまれと考えられる.今回我々は肝原発の平滑筋肉腫の一例を経験したので報告する.症例は60歳代女性.2週間前から続く上腹部のつかえ感を主訴に当科を受診した.受診時の腹部超音波検査にて肝S4を中心に67×30mm大の石灰化,嚢胞成分を含む境界明瞭な腫瘤性病変を認め精査目的にて入院.血液検査では肝機能異常はなく,肝炎ウイルスは陰性,腫瘍マーカーの上昇も認めなかった.造影CTでは肝S4に70mm大の低濃度腫瘤を認め,辺縁は被膜様に淡く造影され内部は遷延性濃染をうけ造影欠損部や石灰化を伴っていた.単純MRIでは腫瘤はT1強調像で淡い低信号,T2強調で肝実質よりも淡い高信号で内部に多数の高吸収部分を認めた.上下部消化管内視鏡では特に所見を認めなかった.上記より非上皮性腫瘍を疑い肝生検を施行したところ平滑筋肉腫の診断であった.PET-CTでは指摘の肝腫瘍以外に集積はなく肝原発と診断し肝左葉切除を施行した.切除標本ではS4を主座とする70×57×42mm大の境界明瞭な灰白色充実性腫瘤で被膜外への露出はなかった.組織学的には,核クロマチンの増量した異型紡錐形細胞の密な増生で構成され,比較的低異型度の領域から多核化ないし奇怪核を含む多形性に富む高度異型を示す領域が混在し核分裂像も散見された.腫瘍細胞は束状増殖や花筵状配列を示して増殖しており,偽被膜様構造を有す周囲肝組織との境界は明瞭であり内部の硝子性変化を示す部分では石灰沈着も認められた.免疫染色ではdesmin陽性,AE1/AE3陰性で,IMP3も陽性で平滑筋腫は否定的であった.Ki-67 proliferative indexは20%程度であった.以上より肝原発の平滑筋肉腫と診断した.術後経過は良好であり現在外来経過観察中である.術後10年後に再発した症例もみられるため十分の経過観察が必要である.
索引用語 肝平滑筋肉腫, 肝腫瘍