セッション情報 |
ポスターセッション(消化器病学会)
肝臓(門脈圧亢進症1)
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タイトル |
消P-80:肝硬変に伴う腹水に特異的な症状尺度ASI-7の開発
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演者 |
小林 健二(聖路加国際病院附属クリニック聖路加メディローカス・一般内科) |
共同演者 |
野口 善令(名古屋第二赤十字病院・総合内科), 大西 良浩(iHope), 脇田 貴文(関西大・社会学部), 岡田 暢(大塚製薬(株)・新薬開発本部開発部), 福原 俊一(京都大・医療疫学) |
抄録 |
【背景と目的】腹水は肝硬変患者のQOLに与えるインパクトが大きいにもかかわらず,患者の訴える腹水の症状を測定するツールはない.我々は,綿密な計量心理学的手順に従い,腹水に特異的な症状を定量化する尺度を開発した.【方法】消化器内科医,総合内科医,計量心理学者を含むチームが,腹水の症状を表す構成概念と質問項目プールを開発した.少数の腹水患者を対象とした質的研究によって構成概念を検証した.パイロット研究を経て項目プールを改良し,尺度のプロトタイプを作成した.175名の腹水患者から自記式質問票調査法によりデータ収集した.172名で腹水治療後に同じ調査を行い,尺度の反応性を評価した.【結果】因子分析と項目応答理論に基づいた分析結果から,幅広い重症度と多様な症状をカバーする7項目を選択し,尺度を構成した(Ascites Symptom Inventory-7:ASI-7).尺度の因子構造は1因子性であり,クロンバックα係数で評価した信頼性は0.96と高かった.尺度スコアは,医師判定の腹水程度,SF-36身体機能およびSF-36活力と相関を示し(それぞれ,r=0.62,-0.63,-0.55),基準関連妥当性が確認された.標準化反応平均(治療前後のスコア変化の平均値÷その標準偏差)は1.18と,ASI-7は治療効果に対して高い反応性を有していた.尺度スコアの変化は,医師判定の腹水程度,体重,SF-36身体機能およびSF-36活力のそれぞれの変化と相関を示した(それぞれ,r=0.56,0.47,-0.60,-0.64).単回帰分析によって,尺度スコア10点満点中の2点の改善は,2.0 kgの体重減少およびSF-36身体機能の1.0標準偏差の増加に相当した.【結論】ASI-7はシンプルで,良好な信頼性,妥当性および反応性を備えており,腹水患者の治療評価や治療モニタリングに用いることができると考えられる. |
索引用語 |
腹水, 症状尺度 |