セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(肝不全,移植)

タイトル 消P-93:

ウイルソン病肝硬変患者に対する酢酸亜鉛製剤の有用性について

演者 奥本 和夫(山形大・消化器内科)
共同演者 水野 恵(山形大・消化器内科), 勝見 智大(山形大・消化器内科), 冨田 恭子(山形大・消化器内科), 佐藤 智佳子(山形大・消化器内科), 西瀬 雄子(山形大・消化器内科), 渡辺 久剛(山形大・消化器内科), 齋藤 貴史(山形大・消化器内科), 上野 義之(山形大・消化器内科)
抄録 【目的】ウイルソン病は放置すると肝炎,肝硬変へと進行することが知られている.しかし,早期に発見され適切な治療が行われれば長期生存が見込まれる.本邦ではこれまで,食事制限およびキレート剤による治療が行われてきたが,2008年1月に銅の吸収を阻害する酢酸亜鉛製剤(商品名;ノベルジン)が承認された.そこで肝硬変へ進行したウイルソン病患者に対する酢酸亜鉛製剤の有用性について検討した.【方法】症例は40歳代男性,30歳代にウイルソン病と診断され,腹腔鏡にて凸凹であり肝硬変であった.Alb4.9g/dl,T-bil 1.7mg/dl,AST14U/l,ALT20U/l,Plt10.8万/μl,PT99%,血清銅17μg/dl,セルロプラスミン7mg/dl,ヒアルロン酸76ng/ml,IV型コラーゲン・7S 4.2ng/ml,腹部超音波検査で肝は凸凹,脾腫認め肝硬変の所見.診断時よりd-ペニシラミン内服を継続していたが2009年10月より酢酸亜鉛製剤(ノベルジン150mg/日)を開始し内服後の肝線維化マーカーの値を比較検討した.【結果】内服開始後3か月よりヒアルロン酸,IV型コラーゲン・7Sの低下を認め,約3年後にはヒアルロン酸25ng/ml,IV型コラーゲン・7S 2.4ng/mlと改善を認めた.アルブミン,血小板,PTには有意な変化は認めなかった.副作用は特に認めなかった.【考察】酢酸亜鉛製剤は過剰な銅にキレート作用をもつメタロチオネインが腸において生成誘導され銅の吸収を阻害する.投与により肝機能(AST,ALT)が改善することは示されているが,本症例のように肝硬変に対する線維化マーカーの改善効果の報告はない.銅の吸収を阻害することにより,d-ペニシラミンのみでは抑制できない肝内銅濃度の上昇を抑え,肝線維化の改善がみられるものと思われた.【結果】酢酸亜鉛製剤が肝線維化の改善に有効であったウイルソン病肝硬変症例の1例を経験した.肝硬変へ進行したウイルソン病でも酢酸亜鉛製剤の投与は検討する価値があると思われた.
索引用語 ウイルソン病, 酢酸亜鉛