セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(その他1)

タイトル 消P-97:

輸入感染症として経験した,活動期日本住血吸虫症

演者 宮本 洋輔(岡山労災病院・消化器内科)
共同演者 白髭 明典(岡山労災病院・消化器内科), 長谷井 舞子(岡山労災病院・消化器内科), 太田 恭子(岡山労災病院・消化器内科), 谷岡 洋亮(岡山労災病院・消化器内科), 清水 慎一(岡山労災病院・消化器内科)
抄録 【背景】日本住血吸虫症(以下,日虫症)は日本では1978年を最後に急性期の感染者は認めず,撲滅された疾患となっている.一方,東南アジアや中国では現在も本症の流行を認め,これらの地域への渡航者や流行住民の入国により,輸入感染症として診断される可能性がある.
【症例】東南アジア圏の20歳代女性
【主訴】左背部痛,発熱
【現病歴】2012年9月発熱と左背部痛を主訴に受診した.血液検査と尿所見から尿路感染症と診断したが,CTにて著明な肝脾腫とS状結腸壁の石灰化を認め,精査目的で入院とした.【入院後経過】尿路感染症は抗生剤投与にて軽快した.入院時検査では白血球と炎症反応の上昇,肝胆道系酵素の軽度上昇と血小板の減少を認めた.腹部エコーでは,肝辺縁に線状エコーを認め,門脈に沿って白色結節状エコーを認めた.CTでは肝表面に石灰化を認め,右葉と尾状葉の腫大が著明で,中肝静脈が肝表に近い部位に偏位していた.門脈本幹,左右枝は細く,cavernous transformationを認めた.下部消化管内視鏡にて盲腸から直腸までの全域に不整形の黄色斑が地図状に観察された.結腸直腸粘膜の生検にて,粘膜層内に日虫症に特徴的な虫卵を多数認めた.また,肝内白色結節部からの生検にて門脈の著しい線維性肥厚と偽胆管の増殖,好酸球浸潤と虫卵を認めた.肝実質には肝硬変の所見は認めなかった.以上の画像と病理組織より日虫症と診断し,日虫症血清抗体価の上昇より,活動期と診断した.プラジカンテル 40mg/kg/日の内服を行い,4ヶ月後の血清抗体価の減少が得られ,経過観察することとした.
【考察】腹部エコー画像は,亀甲状の網目状エコーが特徴的だが,本症例では肝辺縁に線状エコーを認め,比較的感染からの期間が短い症例であると考えられた.CTでも肝辺縁部の萎縮と中心部の肥大を認め,肝硬変像を呈しておらず,感染後長期間を経ていない時期の画像と考えられた.
【結語】輸入感染症として診断された,活動期日本住血吸虫症を経験した.
索引用語 日本住血吸虫症, 輸入感染症