セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(その他1)

タイトル 消P-100:

開発途上国一時的滞在者の肝炎ウイルス感染の危険性

演者 松平 浩(東京慈恵会医大附属病院・消化器・肝臓内科)
共同演者 中島 尚登(東京慈恵会医大附属病院・消化器・肝臓内科), 湯川 豊一(東京慈恵会医大附属病院・消化器・肝臓内科), 上竹 慎一郎(東京慈恵会医大附属病院・消化器・肝臓内科), 高木 一郎(東京慈恵会医大附属病院・消化器・肝臓内科), 田尻 久雄(東京慈恵会医大附属病院・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】厚生労働省では開発途上国への渡航に際し,世界を15地域に分け,7種類のウイルスとそのワクチン接種の必要性を掲示している.HAVに関しては,40歳以下で長期滞在する人を中心に,またHBVに関しても血液に接触する可能性のある人を中心にワクチン接種が勧められている.今回我々は途上国への一時的滞在者を対象とし,出国前と帰国後の各肝炎ウイルス抗体の変動を検討し,各肝炎ウイルス感染の危険性を検討した.【対象と方法】対象は国際協力事業等により,2000年から2004年の5年間に海外26カ国に派遣された男性81名,女性28名の合計109名であり,このうち各ウイルス抗体保持者,ワクチン接種者を除いて検討した.平均年齢・滞在期間は38.8±15.0才,17.2±7.4ヵ月であった.滞在地域は,Asia10カ国79名,Middle East4カ国5名,Africa5カ国8名,Latin America7カ国17名であり,出国前と帰国後に血液生化学検査と共に,HAV,HBV,HCV及びHEVの抗体検査を行った.HA-Ab,IgG-HE-AbはEIA法,HBc-Ab,HCV-AbはCLIA法で測定した.【結果】全体として6.76%にHA-Ab,0.92%にIgG-HE-Abの陽転が認められた.HBc-Ab,HCV-Abの陽転者は認めなかった.地域別では,Asia滞在者の7.8%にHA-Ab,1.3%にIgG-HE-Abの陽転が認められ,Africa滞在者の16.7%にHA-Abの陽転を認めた.Middle East,Latin America滞在者では,各肝炎ウイルス抗体の陽転者は認めなかった.HA-Abの陽転者5名中3名は中国,1名はインドネシア,1名はケニアに滞在していた.帰国後ケニア滞在の1名にのみγGTの軽度上昇を認めた.IgG-HE-Abが陽転した症例は,インドネシアに11ヶ月間滞在していたが,肝機能異常は認めなかった.【結論】今回の検討では平均17.2ヵ月の開発途上国の滞在で,日本人のHA-Abの陽転率が比較的高く,IgG-HE-Abの陽転者も認められた.一方,HBc-Ab及びHCV-Abの陽転者を認めなかった事は,経口感染によるHAVとHEVの感染のリスクが高いことが示唆された.
索引用語 開発途上国, ウィルス性肝炎