セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

肝臓(その他2)

タイトル 消P-107:

近年5年間の当科における肝疾患関連死の検討と特殊感染症症例(Vibrio vulnificus感染症)の経験

演者 松本 信(岩手県立中央病院・内視鏡科)
共同演者 村上 晶彦(岩手県立中央病院・内視鏡科), 天野 良彦(岩手県立中央病院・内視鏡科), 三浦 真奈美(岩手県立中央病院・内視鏡科), 池端 敦(岩手県立中央病院・消化器科), 城戸 治(岩手県立中央病院・消化器科), 小原 範之(岩手県立中央病院・消化器科), 高橋 太郎(岩手県立中央病院・消化器科), 横山 直信(岩手県立中央病院・消化器科), 大方 英樹(岩手県立中央病院・消化器科)
抄録 【はじめに】当科での近年5年間の肝疾患関連死症例は112例であった.背景肝の内訳はHBV関連:18例,HCV関連:46例,アルコール性:38例,その他:10例であった.死亡の内訳として癌死は54例,肝硬変/肝不全は36例,出血が11例,敗血症が11例であった.特殊症例としてVibrio vulnificus感染症による敗血症で死亡した症例を経験したので報告する.【症例】72歳,男性【既往歴】糖尿病,高血圧【嗜好歴】タバコ:20本/日×50年,アルコール:ビール1000ml/日×40年【経過】X月より倦怠感・発熱・体重減少を認め,4ヶ月後に近医を受診.CT検査で肝右葉に巨大な腫瘤を認め,精査加療目的に当科紹介となる.精査でアルコール性肝障害に伴う肝細胞癌が疑われ,当院消化器外科にて肝右葉切除術が施行された.退院後,在宅経過中に食思不振および腹部膨満・脱力が出現し,当院救急外来に搬入となる.体温 40.1℃,血圧 69/40 mmHg,脈拍 139回/分,SpO2 90%台,腹部膨満と軽度の圧痛あり.腹部から大腿部にかけての発赤を認めた.敗血症性ショックの状態であり,大量補液とノルアドレナリンを開始した.入院後,大腿部の発赤は紫色に色調変化し,壊死性の表皮脱落と水疱形成を伴ってきたため,壊死性筋膜炎を疑い当院皮膚科に紹介したが,全身状態不良であり,デブリードメントの適応とは成り得なかった.徐々に全身状態は衰弱し,第3病日に永眠された.血液培養でVibrio vulnificusが検出された.【考察】厚生労働省によると日本におけるVibrio vulnificus感染症はこれまで約200例を確認するのみで,免疫機能低下時や,肝硬変,肝癌など肝臓疾患のある患者に感染すると敗血症を引き起こし重篤化する.肝疾患関連死としては癌死,肝硬変死が多いが,敗血症による死亡症例も見られ,日常診療上,出血のコントロールのみならず感染症への憂慮も必要である.
索引用語 Vibrio vulnificus感染症, 肝硬変