セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胆道(診断2)

タイトル 消P-116:

肝門部IgG4関連硬化性胆管炎の診断,治療の現状と問題点

演者 小泉 理美(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科)
共同演者 田畑 拓久(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科), 神澤 輝実(がん・感染症センター都立駒込病院・消化器内科)
抄録 【目的】IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)のほとんどが下部胆管に起こるが,肝門部胆管に生じると,原発性硬化性胆管炎(PSC)や肝門部胆管癌(CC)との鑑別が問題となる. 肝門部に狭窄を呈するIgG4-SCの診断の現状と問題点を検討した.【方法】肝門部胆管狭窄を伴うIgG4-SC 7例を対象に,臨床・血液・画像・病理組織所見をPSC4例とCC42例と比較検討した.【結果】IgG4-SCの発症年齢は68歳,男女比は1:0.4であり,PSCは39歳と1:3,CCは72歳と1:0.8であった.閉塞性黄疸はIgG4-SC (43%)とPSC(0%)に比べて,CCで76%と有意に高かった(p<0.01).血中IgG4値はIgG4-SCが476 mg/dlで,PSC (37 mg/dl)とCC(41 mg/dl)より有意に高値であったが(p<0.01),CCの1例でも上昇を認めた.IgG4関連疾患の合併はIgG4-SC (57%)のみに,UCの合併はPSC (50%)のみに認められた(p<0.01).ERCにおいて,IgG4-SCでは全例で下部胆管の狭窄部を認めたがPSCでは0例CCでは2例であり(p<0.01),肝門部狭窄の描出率はIgG4-SCとPSCの全例で可能であったがCCでは83%が完全閉塞であった.PSCではmultiple stenosis (100%),beaded appearance (50%),pruned-tree appearance(75%)を呈したが,IgG4-SCではmultiple stenosisを1例で認めたのみであった.IgG4-SCでは非狭窄部でも胆管壁肥厚が全例でみられ,CC (2%)に比べ有意に高率であった(p<0.01).IgG4-SCの胆管生検で著明なIgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を認めたが,PSCでは胆管および肝生検でIgG4陽性形質細胞はみられなかった.CCでは28例中64%で胆汁細胞診がclass 5であった.IgG4-SCはステロイドにより全例速やかに改善が得られたが,2例が再燃した.【結論】肝門部に狭窄をもつIgG4-SCの診断は,血中IgG4値,画像所見,組織学的所見等の組み合せによりPSCやCCと鑑別が可能である.しかし鑑別困難な例が稀に存在し,かかる例では十分な説明の上ステロイドトライアルを行うも選択肢の一つと考える.
索引用語 IgG4, 硬化性胆管炎