抄録 |
腹腔鏡下胆嚢摘出術における開腹移行例について検討した.【対象】当科で施行した腹腔鏡下胆嚢摘出症例4,284例を対象とした.疾患は,胆嚢結石症4,025例および胆嚢腫瘍259例で,急性胆嚢炎622例,慢性胆嚢炎434例,胆嚢癌32例を合併していた.なお明白な胆嚢癌以外は全例に腹腔鏡下手術を,また急性胆嚢炎例はドレナージを行わずに原則入院後24時間以内に手術を施行した.開腹既往歴は1,710例で,虫垂切除1,120例をはじめ,胃切除108例,胆嚢切石3例など延べ2,270回の開腹歴を有していた.【結果】主な術中偶発症は,胆管損傷7例,腸管損傷5例,出血10例であった.開腹移行例は74例で,開腹移行率は1.73%であった.開腹移行の要因は,炎症による癒着剥離困難20例,既往手術による癒着剥離困難23例,出血10例,術中胆嚢癌判明14例,胆管損傷3例,腸管損傷2例,機器の不具合2例であった.疾患別では,急性胆嚢炎例622中例32例(5.14%),胆嚢管閉塞例1,056例中49例(4.64%),開腹既往例1,710例中12例(0.70%),胆嚢腫瘍286例中12例(4.19%),いずれの項目も陰性2,208例中7例(0.32%)で開腹移行した.なお術後に判明した胆管損傷2例や腸管損傷1例では再手術を施行した【結論】腹腔鏡下胆嚢摘出術は手術手技に習熟すれば,急性・慢性胆嚢炎例や胃切除既往例を含む開腹既往例に対しても安全に施行することができる. |