抄録 |
【目的】理想の胆管EMSは,患者が天寿を全うするまで開存するステントである.しかし,ステント閉塞により繰り返し内視鏡治療を要する症例も稀ではない.中下部胆道閉塞症例に焦点をあて,開存期間に寄与する因子を検討した.【方法】2006年12月-2012年12月,当院では146症例に対して163回の胆管EMS留置を実施している.EMSの開存機関に寄与する因子として,留置ステントの種類,化学療法実施の有無を中心に検討した.【成績】原病は膵癌63例,乳頭部癌4例,胆管癌56例,胆嚢癌20例,他臓器癌の浸潤転移が7例であった.留置ステントは,Covered stent 76例(52.1%),Uncovered stent 47例(32.2%),Multi stent 20例(13.7%) であった.146症例中52例が死亡時まで閉塞なく経過,14例は経過不詳,5例はEMS閉塞なく生存,75例がEMS閉塞のため再治療を受けた.平均開存期間は182.1日であった.化学療法実施群(n=33)で181.7日,化学療法未実施群(n=42)で182.3日.Covered 群(n=33)で186.5日,Uncovered 群(n=24)で170.4日,Multi-Stent 群(n=18)で189.5日であった.閉塞の原因は,腫瘍浸潤および胆泥閉塞が考えられる.Covered 群の10例(33%)で,胆泥閉塞をみとめ,バルーンカテーテルなどによるクリーニングで閉塞解除可能であった.中下部胆管閉塞50例でさらに検討した.化学療法実施かつCovered 群(n=14)では164.8日,化学療法未実施かつCovered 群(n=17)では188.1日であった.化学療法実施かつUncovered 群(n=7)では189.4日,化学療法未実施かつUncovered 群(n=12)では154.5日であった.【結論】Covered 群では,胆泥のみによる閉塞が高率にみとめられるため,まずは胆泥クリーニングを試みることは有意義と思われる.Uncovered群では,胆泥のみによる閉塞はみとめず,化学療法実施群でより長期の開存をえられる傾向がある.化学療法による腫瘍浸潤の抑制,EMS内の上皮化による胆泥閉塞の予防などが考えられる.中下部胆管閉塞例において,化学療法を予定している場合には,Uncovered stent を使用することで長期開存をえられる可能性が示唆される. |