セッション情報 | ポスターセッション(消化器病学会)膵臓(基礎) |
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タイトル | 消P-153:遺伝子改変慢性膵炎モデルマウスにおける癌関連遺伝子の解析 |
演者 | 尾崎 宣之(熊本大大学院・消化器外科学) |
共同演者 | 大村谷 昌樹(熊本大生命資源研究・支援センター・技術開発分野), 坂田 和也(熊本大大学院・消化器外科学DELIMITER熊本大生命資源研究・支援センター・技術開発分野), 近本 亮(熊本大大学院・消化器外科学), 生田 義明(熊本大大学院・消化器外科学), 橋本 大輔(熊本大大学院・消化器外科学), 渡邊 雅之(熊本大大学院・消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大大学院・消化器外科学) |
抄録 | 【目的・方法】EGFRなどは慢性膵炎でも強発現し,発癌に寄与するとされているが,慢性膵炎から発癌に至るメカニズムはいまだ不明である.慢性膵炎マウスの樹立を目的に遺伝性膵炎の原因遺伝子の一つである膵内トリプシンインヒビターserine protease inhibitor Kazal type1 (SPINK1) 遺伝子のマウスホモログSpink3遺伝子のノックアウトマウスを樹立したが,外分泌機能不全により出生後に死亡した.そこでSPINK1遺伝子を“部分的”に発現させたマウスと交配し,レスキューを行い,遺伝子改変慢性膵炎モデルマウスを樹立し,解析を行った.【結果】遺伝子改変マウスは軽度の成長障害を示し,8週齢では膵臓全体の萎縮が見られ,全体に腺房細胞脱落と小葉内線維化が存在した.膵線維化を引き起こす膵星細胞の活性化が見られ,TGF-β過剰発現が見られた.膵管様構造が集簇したtubular complexと呼ばれる,膵発癌に関わっているとされる構造が全体に見られた.tubular complexを形成する膵管上皮細胞の一部はアミラーゼとサイトケラチンを共に発現しており,腺房細胞が脱分化し,膵管上皮様細胞に形質転換した,いわゆるacinar to ductalの変化と考えられた.またtubular complexを形成する細胞の一部や,膵管様構造を形成する腺房細胞ではKi67陽性で,異常な増殖を示していた.拡張した膵管上皮の一部は過形成が見られ,PanINと類似していた.異常な増殖を示す腺房細胞と共に,この過形成上皮細胞でもEGFR陽性であり,すでに慢性膵炎の状態でもKras遺伝子,EGFRファミリー遺伝子の発現上昇が見られ,前癌状態への移行期である可能性が示唆された.【結語】遺伝子改変慢性膵炎モデルマウスは膵癌に至るモデルとなる可能性がある. |
索引用語 | 慢性膵炎, 膵癌 |