セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(基礎)

タイトル 消P-156:

膵癌進展に及ぼすB細胞活性化因子(BAFF)の作用

演者 小泉 光仁(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
共同演者 日浅 陽一(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 熊木 天児(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 阿部 雅則(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 松浦 文三(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 恩地 森一(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学)
抄録 【目的】B細胞活性化因子(BAFF)は, B細胞の活性化, 生存維持や分化を促す. 造血器腫瘍および乳癌の進展にBAFFが関与することが報告されているが, BAFFが膵癌の進展に関与するか否かについては不明である. そこで膵癌の進展に及ぼすBAFFの作用機序を明らかにすることを目的とした. 【方法】膵癌症例44例およびコントロール症例44例の血清BAFF濃度をELISAで測定し, 臨床背景との関連を比較検討した. 膵癌におけるBAFFおよびBAFFの受容体についてヒト膵癌組織を免疫染色して検討した. 次に膵癌細胞株を用いてBAFFの受容体発現をRT-PCRとWestern blottingで確認した. BAFF添加による膵癌細胞株PANC-1の形態変化, および形態変化より推測された上皮間葉移行に関連した変化をreal-time RT-PCR, Western blotting, wound healing/scratch testおよびinvasion assayで確認した. PANC-1にプラスミドで遺伝子導入してBAFF-receptor (BAFF-R)を高発現する膵癌細胞株クローンを作製し, 上皮間葉移行関連遺伝子と運動能の変化を検討した. 【成績】膵癌症例の血清BAFF濃度はコントロール症例と比較して有意に上昇していた. とくに遠隔転移のある症例は, 遠隔転移のない症例と比較して血清BAFF濃度が有意に上昇していた. 原発巣の腫瘍径と血清BAFF濃度の間には正の相関がみられた. ヒト膵癌組織において膵癌細胞周囲に浸潤するB細胞はBAFF染色陽性であり, 膵癌細胞ではBAFF-R染色が陽性であった. 複数の膵癌細胞株でBAFF-Rが発現していた. BAFF添加によりPANC-1は紡錘形に形態変化し, E-cadherinの発現減少, vimentinおよび転写因子であるSnailの発現増加がみられ, 運動能と浸潤能を亢進させた. 作製したBAFF-Rを高発現する膵癌細胞株クローンではNF-κB2の活性化, E-cadherinの発現減少, vimentin, Snailの発現増加がみられ, 運動能の亢進がみられた. 【結論】血清BAFF濃度は進行膵癌症例において高値であり, BAFFは膵癌細胞の運動能, 浸潤能を亢進させ, 膵癌の進展に寄与すると考えられた.
索引用語 膵癌, BAFF