セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(基礎)

タイトル 消P-160:

セルレイン慢性膵炎モデルマウスを用いた糖代謝異常の検討

演者 川崎 慎太郎(慶應義塾大・内科)
共同演者 中村 雄二(慶應義塾大・内科), 金井 隆典(慶應義塾大・内科), 日比 紀文(慶應義塾大・内科)
抄録 【目的】2006年は糖尿病が日本で820万人,世界で1億7100万人存在し,境界型糖尿病は日本で2000万人存在する.インスリン分泌や抵抗性に関する研究が進んでいるが,まだ不明な点が多い.In vivoで膵臓組織のインスリン分泌を研究するためには動物モデルが必要であり,我々は今回慢性膵炎マウスモデルを用いて糖代謝を検討した.【方法】マウス体重50mg/kgのセルレインを1時間毎6回投与する膵炎を週2回10週間継続する慢性膵炎モデル(CP)を作成し,インスリン値やGTT試験を検討した.また,膵ラ氏島の数や大きさ,インスリン分泌に関与する血液中GLP-1と膵ラ氏島のGLP-1受容体を比較した.さらに野生型マウス(WT)に加えてCCR2ノックアウトマウス(KO)でCPを作製しインスリン分泌における単球・マクロファージの関与も検討した.【結果】ヒト慢性膵炎と同様にCPマウスで体重減少・線維化・腺房細胞脱落・血液中膵酵素低下を認めた.また,CPマウスは血液中GLP-1が上昇,膵ラ氏島数が増加し,血液中インスリン値がごく軽度上昇していたが,反対に膵ラ氏島GLP-1受容体が減少していた.CCR2-KOのCPマウスは対照に比べて膵臓炎症とGTTが増悪し,膵ラ氏島GLP-1受容体発現が低下していた.さらに,CPマウスにGLP-1受容体作動薬を投与したところGTTが改善した.膵臓をコラゲナーゼ処理したFACS解析でCCR2-KOのCPマウスは Gr1(-)CD11b(+)やGr1(high)CD11b(+)マクロファージが膵臓内に増加していた.【結論】マウスのCPモデルは糖代謝研究に有用であり,慢性膵炎は膵ラ氏島GLP-1受容体発現を低下させ糖代謝に影響を与えた.この病態改善にはGLP-1作動薬が有望である.さらに,膵ラ氏島GLP-1低下にはCCR2シグナルを介した単球とマクロファージ浸潤が重要な役割をしていると考えられた.
索引用語 慢性膵炎, 糖尿病