セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(診断)

タイトル 消P-163:

膵腫瘍の診断マーカーとしてのムチン発現解析

演者 新原 亨(南風病院・消化器内科)
共同演者 田中 貞夫(南風病院・病理診断科), 米澤 傑(鹿児島大大学院・人体がん病理学)
抄録 【目的】膵癌や,亜型により予後の異なる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の正確な診断はしばしば困難を極める.これまでの当院関連施設人体がん病理学での研究において,膵癌は MUC1 [+]・MUC2 [-]・MUC5AC [+], intestinal-type IPMN は MUC1[-]・MUC2[+]・MUC5AC[+], gastric-type IPMN は MUC1[-]・MUC2[-]・MUC5AC[+]の発現様式であること,さらに,IPMNの悪性化に伴う癌浸潤部ではMUC1[+]となることが明らかにされてきた.また,MUC4が 膵癌の予後不良因子であることや,gastric type-IPMNよりもintestinal type-IPMNに有意に高発現することも判明した.これまでとは異なる症例群を検索して,膵腫瘍におけるムチン発現様式の普遍性を確立すると共に,ムチンの遺伝子発現におけるDNAメチル化機構の臨床応用も試みた.【方法】当院における手術標本の膵癌 35例 とIPMN 7例 (intestinal-type 3例 [浸潤癌合併 1例]),gastric-type 4例 [浸潤癌合併 2例]) におけるムチン発現を免疫染色にて検索し,10%以上の腫瘍細胞が染色された場合を陽性とした.また,当院関連施設人体がん病理学で開発された新しいDNAメチル化高感度解析法「Methylation specific electorophoresis (MSE)」を用いて膵液を分析した.【成績】膵癌 35例 では MUC1: 100% (35/35)・MUC2: 0% (0/35)・MUC4: 37% (13/35)・MUC5AC: 54% (19/35)であった.Intestinal-type IPMN 3例 の非浸潤性腫瘍部では MUC1: 0% (0/3)・MUC2: 100% (3/3)・MUC4: 100% (3/3)・MUC5AC: 100% (3/3) ,浸潤癌部では MUC1[+]・MUC2[-]・MUC4[+]・MUC5AC[-]であった.Gastric-type IPMN 4例 の非浸潤性腫瘍部では MUC1: 0% (0/4)・MUC2: 0% (0/4)・MUC4: 50% (2/4)・MUC5AC: 100% (4/4) ,浸潤癌部では MUC1[+]・MUC2[-]・MUC4[-]・MUC5AC[+]であった.膵液のMSE解析結果に画像所見を加味して,4例中3例の膵癌の存在予測が可能であった.【結論】膵癌とIPMNのムチン発現様式は普遍的であり, 膵液のMSE解析は膵腫瘍の診断に応用できうる.
索引用語 膵腫瘍, ムチン