セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(自己免疫性膵炎1)

タイトル 消P-177:

小児期発症の自己免疫性膵炎の3例

演者 村田 真野(市立枚方市民病院)
共同演者 余田 篤(大阪医大・小児科), 青松 友槻(大阪医大・小児科), 井上 敬介(市立枚方市民病院)
抄録 【はじめに】自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis: AIP)は壮年期男子に好発し,小児期の発症はまれとされている.われわれが経験した小児期発症のAIPの3例について文献的考察を加えて報告する.【症例1】4歳,男児.基礎疾患は潰瘍性大腸炎.主訴は腹痛で,膵酵素上昇,CTでびまん性膵腫大を呈し,ERCPで膵管狭細像を認めた.IgG 4 n.d. (IgG 1,210mg/dl)であった.大腸全摘術で軽快.【症例2】10歳,男児.基礎疾患はなし.主訴は腹痛で,膵酵素上昇,CT撮影でびまん性膵腫大を呈し,ERCPで膵管狭細像を認めた.IgG4 114mg/dl (IgG 1,070mg/dl)であり,抗lactoferrin抗体が陽性であった.膵炎の再発を繰り返したがステロイド未使用で自然寛解.【症例3】16歳,男児.基礎疾患は潰瘍性大腸炎.主訴は腹痛で,膵酵素上昇,CT撮影で膵頭部限局性腫大を呈し,ERCPで膵管狭細像を認めた.IgG4 22.5mg/dl (IgG 906mg/dl) であり,抗lactoferrin抗体が陽性であった.膵炎の再発を繰り返したが全結腸摘出後に軽快.【考察】若年(40歳未満)のAIPの報告例の多くは炎症性腸疾患の合併が多く,小児例でも同様の傾向を認めた.臨床像及び病理組織学的な違いから炎症性腸疾患合併のAIPは既存のAIPとは別の病態と考えられている.わが国の診断基準を満たす小児のAIPの報告例は極めて少ない.報告が少ない原因として,小児科医にその疾患概念自体がほとんど認知されていないこと,IgG4の値が年齢依存的に低いこと,また小児のERCPや膵組織生検を行える施設が少ないことがあげられる.【結語】AIPは自然軽快例もあり,小児の間欠的あるいは慢性的な腹部症状を有する膵炎例の中に,診断されていない小児AIPの患者が潜在している可能性がある.また,小児期炎症性腸疾患の合併症としてのAIPを認識しておく必要がある.また,AIPを含めたIgG4関連疾患の小児独自の診断基準の作成が必要と考える.
索引用語 自己免疫性膵炎, 小児