セッション情報 シンポジウム4(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会合同)

胃がん検診の理想的な住み分け:新しい検診方式を目指して

タイトル 検S4-2追:

胃がん検診の理想的な棲み分け:新しい検診方式を目指して

演者 光島 徹(亀田メディカルセンター幕張・消化器科)
共同演者 赤羽 麻奈(亀田メディカルセンター幕張・消化器科), 和田 亮一(亀田メディカルセンター幕張・消化器科)
抄録 【目的】我々の人間ドックX線・内視鏡選択胃がん検診(以下選択検診)および胃癌リスク検診の成績を分析して、我が国における胃がん検診の新たなニッチを探る。
【対象】1.1985年4月から2011年3月までの26年間に、我々の選択検診を受診したのは述べ346,734名、重複を排した実人数は90,224名。2.リスク検診受診者は、2010年1月から10月までの選択検診受診者16,647名。
【成績】1.検査法別胃癌発見率・早期癌比率:初回受診者90,224名における胃癌発見率はX線0.08%(39/46618)、内視鏡0.28%(122/43606)。早期癌比率はX線43.6%(17/39)、内視鏡48.4%(59/122)。2.年代別HP抗体陽性率:併用検診受診者16,647名におけるHP抗体陽性率は、20代7.8%(12/153)、30代15.6%(340/2180)、40代20.8%(1145/5492)、50代35.8%(2173/6067)、60代44.3%(1049/2368)、70代46.6%(171/367)、80歳以上50.0%(10/20)。
【考察・結語】1.初回受診者における胃癌発見率は、内視鏡がX線の約3倍であった。2.若年者(40歳未満)の約9割が胃癌罹患リスクの極めて低いHP抗体陰性者であった。3.今後急速に減少していくことが確実な胃がんに対して、現行の対策型検診システムを継続していくことは、医学的、経済的妥当性がない。HP陽性率が15%未満の40歳未満の世代ががん適齢期となる2020年頃までには、根本的に体制を変革する必要がある。我々の提案は、まず適切な年齢(15歳?)で公費によるHP抗体検査を実施する。陰性者に対しては、がん適齢期(40歳?)になったら、10年に1度の内視鏡検診を原則として自費で受診することを勧奨する。陽性者のうち希望者に対しては、公費(保険)で除菌治療を実施する。除菌成功者は陰性者と同様、がん適齢期以降10年毎の内視鏡受診を勧奨する。除菌失敗例については、胃がん高危険群としてがん適齢期以降、内視鏡による逐年検診(保険)を行う。以上の対策で、胃がん検診および治療に要する費用が大幅に節約でき、また無用のX線被曝や内視鏡事故を回避することができる。
索引用語 胃がん検診, 胃がんリスク検診