セッション情報 |
ワークショップ9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)
分子診断学からみた大腸腫瘍の治療成績と予後
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タイトル |
W9-基調講演:大腸腫瘍の病態に関わるエピゲノム異常
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演者 |
近藤 豊(愛知県がんセンター研究所・分子腫瘍学部) |
共同演者 |
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抄録 |
発がん過程には様々な経路が存在し、症例ごとに個々の性格が異なっていることが予測される。したがって従来の診断法に加えて、がんを発がん経路やその性格に基づいて分類することは、治療法を決定する上で有用である。例えば肺がんではEGFR遺伝子変異やALK遺伝子の解析がチロシンキナーゼ阻害剤の治療効果予測に有用であり、大腸がんではKRAS遺伝子の変異の有無がセツキシマブ治療の予測マーカーとして有効である。このように分子生物学的にがんを解析し、個別化診断に応用する試みが実際の臨床現場に登場しつつある。また最近では、遺伝子のゲノム異常に加えてDNAメチル化異常などのエピゲノム異常の検出が、がんの新しい診断法として期待されている。DNAメチル化異常は安定したエピゲノム修飾異常であり、ほとんどすべてのがん細胞で認められ、発がんの早期から浸潤・転移まで関わっているため、DNAメチル化の測定からがんのリスク診断や病態診断まで応用が期待できる。さらに近年DNAメチル化に関わる酵素群の遺伝子異常が、がん細胞で見つかってきており、DNAメチル化・脱メチル化の制御異常は、大腸がんの発がん過程のひとつとして関わっている可能性が推測される。我々の研究室では、これまで大腸がんのDNAメチル化異常の網羅的解析やエピゲノム解析を通して、エピゲノムプロファイルと大腸がんの臨床病理像との関連について研究を進めてきた。さらにがん細胞のDNAメチル化異常に関わる様々なメカニズム異常について研究を発展させている。本シンポジウムでは、大腸がんのDNAメチル化異常に関わるメカニズムの解明と、その異常を標的とした臨床応用について紹介する。今後、大腸がん治療戦略の確立のため、臨床-病理-分子生物学のアプローチを融合した新たな診断法への取り組みについて述べたい。 |
索引用語 |
エピゲノム, 診断 |