セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

膵臓(その他)

タイトル 消P-242:

膵癌との鑑別を要した腹腔動脈解離の2例

演者 沖田 啓(山形市立病院済生館・消化器内科)
共同演者 黒木 実智雄(山形市立病院済生館・消化器内科), 善如寺 暖(山形市立病院済生館・消化器内科), 須貝 彩子(山形市立病院済生館・消化器内科), 名木野 匡(山形市立病院済生館・消化器内科), 三浦 敦司(山形市立病院済生館・消化器内科), 平川 秀紀(山形市立病院済生館・消化器内科)
抄録 孤立性腹部内蔵動脈解離は比較的稀な疾患であり,特に腹腔動脈解離の報告は少ない.原因や予後などは明らかになっておらず,治療方針に関しても一定の見解は得られていない.今回,膵癌との鑑別を要し,保存的治療を行った腹腔動脈解離の症例を2例経験したので報告する.【症例1】46歳女性.腹痛,背部痛を主訴に当科を受診.腹部所見に明らかな異常はなく,バイタルサインも安定していた.CTにて径10mm程度の腹腔動脈瘤を認め,flapを示唆する所見もあったが,血管周囲に低吸収域が拡がっており,浸潤性膵管癌の後方浸潤と腹腔動脈解離との鑑別を要した.血液検査上は腫瘍マーカー,抗核抗体や抗好中球細胞質の上昇はなく,軽度の炎症反応を認めた.鎮痛薬の投与のみで経過観察していたところ,身体所見・画像所見ともに改善.現在も外来でフォローアップ中である.【症例2】42歳女性.心窩部痛・背部痛を主訴に当科を受診.腹部所見には明らかな異常はなかった.CTにて腹腔動脈から総肝動脈にかけての壁不整像を認めた.血液検査では腫瘍マーカーを含めて明らかな異常所見は認めなかった.膵癌の血管周囲浸潤も鑑別に挙がったが,腹腔動脈腔内にflapを疑う所見があり,腹腔動脈解離が考えられた.鎮痛剤と血圧のコントロールによる治療を継続中である.孤立性腹部内臓動脈解離の臨床症状としては腹痛が最も多い.診断は,超音波,CTや血管造影が有用であるとされているが,今回の2症例においては画像上明らかな解離所見に乏しく,膵癌との鑑別が必要であった.孤立性腹部内蔵動脈解離においては,腸管虚血や動脈瘤化に伴う破裂をきたした場合には手術の適応となるため,そのタイミングを逃さないことが重要である.腹痛を訴える患者の鑑別診断の一つとして,常に血管系のトラブルも念頭に置いて診療に当たる必要がある.
索引用語 腹腔動脈解離, 内臓動脈解離