抄録 |
【はじめに】現在,Helicobactor pylori(Hp)一次除菌療法としてプロトンポンプ阻害剤(PPI)+アモキシリン(AMPC)+クラリスロマイシン(CAM)の3剤(PAC)療法が広く行われているが,CAMは呼吸器系への組織移行に優れているため,呼吸器感染症に対し古くから広く処方されてきた結果,近年CAM耐性Hpの増加により一次除菌率は低下傾向にある.また,慢性閉塞性肺疾患患者では高いHp感染率を示すなど,慢性呼吸器疾患患者とHpは密接な関係がある.今回,当院における慢性呼吸器疾患患者のHp感染率,除菌治療成績,背景の萎縮性胃炎の拡がりについて検討を行った.【方法】対象は2011年4月から2013年2月までの間に上部消化器症状で内視鏡検査とHp検査を行った220例(慢性呼吸器疾患患者121例[COPD群73例,非COPD群48例]と呼吸器疾患を持たない患者;対照群99例)のHp感染率と,これらの中で除菌治療とその後の判定まで行えた56例(慢性呼吸器疾患患者29例[COPD群20例,非COPD群9例]と対照群27例)の一次と二次除菌治療成績,内視鏡による萎縮性胃炎の拡がりの程度について比較を行った.Hp感染は尿中抗H. pylori抗体検出試薬または尿素呼気試験で確認し,除菌判定は内服終了してから約4週間後に尿素呼気試験にて行った.また,内視鏡による萎縮粘膜の拡がりには木村・竹本分類を用いた.【結果】Hp感染率はCOPD群49.3%(36/73),非COPD群 41.7%(20/48)で,対照群55.6%(55/99)だった(p>0.05).一次除菌率はCOPD群55.0%(11/20),非COPD群66.7%(6/9),対照群63.0%(17/27)だった(p>0.05).二次除菌率はそれぞれ100%(6/6),100%(3/3),80%(4/5)だった(p>0.05).萎縮粘膜の拡がりはCOPD群(close type8例,open type12例),非COPD群(close type5例,open typ4例),対照群(closed type22例,open type5例)だった(p<0.05).【結語】慢性呼吸器疾患患者のCOPD群は非COPD群に比べHp感染率が高く,一次除菌率が低い傾向にあった.またCOPD群の胃粘膜萎縮は対照群に比べ有意に高度萎縮していた. |