セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(NSAIDs)

タイトル 消P-342:

当院における上部消化管出血の現況とNSAIDsの及ぼす影響

演者 河口 剛一郎(鳥取大・機能病態内科)
共同演者 八島 一夫(鳥取大・機能病態内科), 村脇 義和(鳥取大・機能病態内科)
抄録 【目的】近年の高齢化に伴うNSAIDs投与や抗血栓療法の増加により,上部消化管出血の背景が変化している.今回,上部消化管出血にNSAIDsが及ぼす影響を検討した.【方法】対象は2003年から2011年に,上部消化管出血疑いにて内視鏡検査が施行され,静脈瘤以外の出血源を認めた450例.これらの疾患の内訳,止血処置率,患者背景,予後(内視鏡的止血不能や再出血を難治,30日以内在院死の予後不良)などにつき,低用量アスピリン(LDA)含むNSAIDsとの関連を解析した.【結果】450例(平均65歳,男女比320:130) の内訳は,胃潰瘍181例(40%),十二指腸潰瘍82例(18%),悪性腫瘍46例(9%)などであった.このうち165例(37%)にNSAIDsが投与され,203例(45%)で止血処置を必要とした.NSAIDs非使用285例(平均64歳,男女比211:74)をA群,NSAIDs使用165例(平均68歳,男女比109:56)をB群,そのうち高用量使用112例(平均65歳)をC群,LDA使用64例(平均74歳)をD群とした.年齢,性別ではB群はA群より有意に高齢(p<0.005)で,女性が多い傾向があった(p=0.07).B群内はD群がC群より有意に高齢であった(p<0.001).疾患併存は,心疾患,脳血管疾患,整形疾患などがB群で高率であったが,悪性腫瘍は変わりなかった.酸分泌抑制薬の使用状況は,B群では33%の症例で使用されており,A群の22%よりも有意に高かった(p<0.05).B群の止血処置率は52%であり,A群の処置率41%に比べ有意に高かった(p<0.05).特にB群内でも,抗凝固薬との併用や高用量NSAIDとLDA併用などの多剤併用群の処置率71%(22/31)が,単剤投与群の処置率48% (64/134)より有意に高かった(p<0.05).一方,難治・予後不良などのアウトカムは,NSAIDs併用との関連は認められず,高齢や担癌患者などの患者背景と関連していた(p<0.01).【結語】上部消化管出血において,NSAIDs投与,特に複数の薬剤併用は止血処置を要する出血のリスクであったが,アウトカムには関与していなかった.
索引用語 上部消化管出血, NSAIDs