抄録 |
背景・目的:DNAメチル化は癌発生,進展に深く関わっている.標的臓器のDNAメチル化のみならず,非標的組織(血液など)のDNAメチル化状態が発癌リスクに関連している可能性が示唆されている.胃癌発生における全血DNAメチル化異常の意義を検討するため,胃癌患者における全血DNAメチル化を検索した.対象・方法:72人の胃癌患者,67人の非癌者,52人の若年健常者の全血DNAを使用した.16部位のCpG island (MINT25, RORA, GDNF, CDH1, RARAB2, ER, CDH13, MYOD1, SFRP1, P2RX7, SLC16A12, IGF2, DPYS, N33 ,MYO3A, SOX11) およびLINE1 repetitive elementのメチル化状態をBisulfite pyrosequencingにより検索した.また,感度を高くする目的でMINT25, MYO3A, SOX11に関してMethylation-specific real-time PCR (qMSP) による検討も行った.結果:全16部位のCpG island およびLINE1 repetitive elementのうち,SFRP1 の高メチル化が胃癌リスクと有意に関連しており,(11.3% vs. 10.5%; adjusted p=0.009),91例の別の胃癌コホートでも同様の結果を得た(adjusted p=0.001).9 部位のメチル化状態 (GDNF, CDH1, RARAB2, CDH13, MYOD1, SFRP1, SLC16A12, DPYS, N33, LINE1) と,平均Z スコアは 高齢 (R=0.41, p<0.0001) およびテロメア短縮 (R=-0.18, p=0.01) との相関を認めたが,胃癌リスクとは関連がなかった.結論:全血DNAメチル化の多くは加齢による血球の細胞回転を反映していると考えられる.SFRP1のメチル化は胃癌発症に関連している可能性が示唆されたが,感度,特異度の点で問題があり,さらなる検討が必要と考えられた. |