セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

胃・十二指腸(胃癌3)

タイトル 消P-358:

胃がんにおけるCD44 variant 9発現を介した5-FU耐性機序の検討

演者 岡田 佐和子(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大・消化器内科), 正岡 建洋(慶應義塾大・消化器内科), 津川 仁(慶應義塾大・消化器内科), 松崎 潤太郎(慶應義塾大・消化器内科), 福原 誠一郎(慶應義塾大・消化器内科), 平田 賢郎(慶應義塾大・消化器内科), 森 英毅(慶應義塾大・消化器内科), 佐谷 秀行(慶應義塾大・先端医科学研究所遺伝子制御研究部門), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】近年,胃がん幹細胞の表面マーカーであるCD44のsplicing variant,CD44 variant 9(CD44v9)の病態への関与が報告されている.CD44v9は細胞膜上のシスチン輸送体であるxCTの膜安定化に作用し,細胞内還元型glutathione(GSH)濃度を上昇させ,抗酸化能,ひいては活性酸素種(ROS)産生性抗癌剤であるcisplatinの耐性獲得に関わることが示された(Cancer Cell 19, 2011).今回,我々はcisplatinと同様に胃がん化学療法における標準的治療薬であるfluorouracil(5-FU)について,CD44v9発現による耐性獲得の有無とその機序について検討した.
【方法】CD44陰性の中分化胃がん細胞株MKN28にCD44 standard(CD44s)とCD44v9を強制発現させ,5-FU感受性をMTS assayで評価した.5-FU投与後の細胞内還元型GSH濃度の変化を発光セルベースアッセイで,細胞内ROS量はROS感受性蛍光プローブを用いたflowcytometryで検討した.また,xCT抑制作用を有するsulfasalazine(SASP)投与下での5-FU感受性,GSH,ROSの変化も同様の手法で評価した.
【成績】5-FU投与後のCD44v9発現胃がん細胞の生存率は,野生型,CD44s発現胃がん細胞と比較し有意に上昇した(p<0.05).5-FU投与後の細胞内ROS濃度は,野生型,CD44s発現細胞では,濃度依存的に上昇したが(p<0.01),CD44v9発現細胞では変化しなかった.5-FU投与下の細胞内還元型GSH濃度は,非投与時と比較し,野生型(p<0.01),CD44s発現細胞(p<0.05)では有意に低下したが,CD44v9発現細胞では変化しなかった.このCD44v9発現細胞の5-FU耐性は,SASP濃度依存的に抑制され,5-FU,SASP共投与下で,細胞内ROS含量は有意に増加した(p<0.05).
【結論】胃がんにおけるCD44v9発現による酸化ストレス耐性獲得は5-FUに対する抗がん剤耐性機序に関与し,SASPはその機序を抑制した.
索引用語 CD44v9, 胃がん