セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸(基礎)

タイトル 消P-380:

スタチンによる小腸上皮細胞間リンパ球(IELs)のサイトカイン産生制御

演者 大澤 恵(浜松医大・光学医療診療部)
共同演者 高柳 泰宏(浜松医大・1内科), 寺井 智宏(浜松医大・1内科), 谷 伸也(浜松医大・1内科), 大石 愼司(浜松医大・1内科), 岩泉 守哉(浜松医大・1内科), 山田 貴教(浜松医大・1内科), 杉本 光繁(浜松医大・1内科), 古田 隆久(浜松医大・臨床研究管理センター), 杉本 健(浜松医大・1内科)
抄録 【目的】スタチンは,HMG-CoA還元酵素阻害剤で高脂血症治療薬として臨床現場で広く使用されているが,近年その免疫調節,抗炎症作用などの新たな作用が注目されている.消化管疾患においてもマウスを用いた実験腸炎モデルでの研究が報告され,炎症性腸疾患等の免疫系を介した消化器疾患における新たな薬剤としても期待されるが,消化管粘膜免疫におけるスタチンの直接的な作用は検討されていない.今回,我々はGALTの最前線の効果装置である上皮間リンパ球(Intraepithelial lymphocytes: IELs)におけるサイトカイン制御機構について検討した.【方法】C57BL/6マウスの小腸より,IELsを単離し一次培養した.比較対象として脾細胞を用いた.サイトカイン産生は抗CD3/CD28抗体による刺激下で48時間後の培養液上清の濃度で評価した.スタチン投与の影響はSimvastatinおよびLovastatinを用いて検討した.サイトカイン制御機序におけるMevalonete経路の関与について,下流基質の投与の影響で検討した.【成績】IELsは抗CD3/CD28抗体刺激下で,IFN-γ,TNF-α,IL-2有意に産生し,脾細胞ではこれらに加えてIL-5も有意に産生した.SmvastatinおよびLovastatinは,500nM~50μMまでの濃度で用量依存的にIELsおよび脾細胞のIFN-γ,TNF-α,IL-2およびIL-4の産生を有意に抑制した.このとき,細胞数で評価したCell viabilityは変化を認めなかった.SimvastatinによるIFN-γ,TNF-α,IL-2の抑制効果は,部分的ではあるがMevalonate経路の下流基質であるMevalonate,FPP,GGPPの投与により,有意に回復した.【結論】スタチンは,マウスのIELsに直接作用してサイトカイン産生を抑制した.スタチンの直接的な腸管粘膜免疫制御の一端が明らかとなり,今後の消化管疾患における新たな治療薬としての可能性が示唆された.
索引用語 上皮細胞間リンパ球, スタチン