セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸(基礎)

タイトル 消P-382:

NSAIDs小腸傷害はTRPV4イオンチャネル活性化を介して生じる

演者 山脇 秀元(富山大・3内科)
共同演者 三原 弘(富山大・3内科), 鈴木 庸弘(富山大・3内科), 杉山 敏郎(富山大・3内科)
抄録 【目的】NSAIDs消化管障害は上部のみならず小腸にも高率に生じる.プロトンポンプ阻害薬は上部消化管障害を予防しうるが,小腸障害には無効,あるいは増悪させるとの報告もあり,NSAIDs消化管障害の病態解明及び,新規薬剤の開発が期待されている.我々は,消化管上皮に非選択性陽イオンチャネルのTRPV4(transient receptor potential vanilloid 4)が発現していることを報告してきたが,NSAIDsのCOX阻害作用により生じるアラキドン酸カスケードの5,6-エポキシエイコサトリエン酸(5,6-EET)には,TRPV4活性化能があることが判明しており,小腸上皮細胞に発現するTRPV4の活性化を介して,小腸粘膜傷害に関与する可能性が推測される.【方法】ラット小腸上皮細胞株(IEC-6)のTRPV4の発現をRT-PCR法,免疫染色法により,その機能をCa2+イメージング法により検討した.IEC-6単層培養系を用いて,TRPV4活性化剤(GSK1016790A),及びインドメタシンによる透過性亢進を経上皮電気抵抗測定(TER)で評価した.野生型とTRPV4欠損マウスを用いてインドメタシン誘発小腸潰瘍形成を検討した.【成績】IEC-6におけるTRPV4のmRNA及び蛋白の発現,TRPV4活性化剤に対するCa2+応答が確認された.単層細胞系のTERはTRPV4活性化剤,5,6-EETおよび,インドメタシンン処理後,有意に低下し,この低下は選択的TRPV4阻害剤,TRPV4 siRNAによるノックダウンで,有意に阻害された.TRPV4欠損マウスではインドメタシン誘発性小腸潰瘍形成が有意に抑制された.【結論】小腸上皮細胞にTRPV4が機能的に発現し,その活性化はTERの低下を引き起こした.また,インドメタシン投与による小腸上皮細胞のTERの低下が,TRPV4を介していることが判明した. TRPV4欠損マウスではインドメタシン誘発性小腸潰瘍形成が抑制された.したがってインドメタシン誘発性小腸潰瘍の予防にTRPV4阻害剤が有効である可能性が示唆された.TRPV4は,小腸以外にも広く消化管上皮に発現しており,食道から結腸までのNSAIDs消化管障害を予防できる治療標的となり得る.
索引用語 NSAIDs小腸傷害, TRPV4