セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

小腸(基礎)

タイトル 消P-383:

ラット小腸粘膜上皮創傷治癒遅延におけるヒスチジンとインドメタシンの影響

演者 市川 寛(同志社大・生命医科学)
共同演者 高木 智久(京都府立医大・消化器内科), 内藤 裕二(京都府立医大・消化器内科)
抄録 【目的】近年,高齢化が進むにつれて関節炎などを訴える患者が増え,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用が避けられない現状にある.一方アミノ酸は,タンパク質合成やエネルギー源の素材,生理活性物質の前駆体として機能するが,先行研究によりヒスチジン(HIS)単独欠乏状態が著しく小腸粘膜上皮創傷治癒を遅延させることが観察されている.本研究では,IMによる小腸粘膜上皮創傷治癒遅延に及ぼすHISの影響について検討した.【方法】全ての実験でラット小腸上皮細胞株(RIE)を用いた.Controlは全アミノ酸を添加したFull培地とした.細胞増殖能におけるHIS,IMの及ぼす影響をMTT Assayにより測定し,また円形上皮欠損モデルを用いて上皮損傷修復初期における細胞遊走能に対する影響を測定した. 損傷修復におけるアポトーシスに対するHIS,IMの影響をウエスタンブロット法でCaspase-3を指標に検討した.HIS,IMのミトコンドリアへの影響をみるために,ケミルミネッセンス法を用いてミトコンドリアのSpare Respiratory Capacity(SRC)を測定した.さらに,ミトコンドリア局在性Bcl-2 familyへのHIS,IMの影響をウエスタンブロット法により検討した.【成績】細胞増殖能,細胞遊走能ともにHIS濃度減少に伴って低下した.また,IM濃度依存的に低下する傾向が得られ,HIS欠乏下ではさらにその影響が大きくなることが示された.また,HIS欠乏下でのIMによるpro Caspase-3の発現は有意に増加した.SRC値はHIS欠乏下でさらに低下し,Bcl-2 familyの発現にもHIS濃度依存的に各々変化がみられた.【結論】HIS低下及びIM増加に伴い細胞増殖の抑制,細胞遊走の遅延,アポトーシスの亢進が観察され,IM存在下においてHIS欠乏状態が共存するとさらに増悪することが示された.高齢者において,うつ病,透析,熱傷などのストレスにより生体内のHIS濃度が低下することが知られているが,本研究はNSAIDs惹起性小腸粘膜傷害が個体の血中HIS濃度低下により増強される可能性を示唆している.
索引用語 インドメタシン, ヒスチジン