セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(基礎1)

タイトル 消P-402:

骨髄間葉系幹細胞依存性の大腸癌細胞増殖の機序

演者 一色 裕之(札幌医大・1内科)
共同演者 有村 佳昭(札幌医大・1内科), 永石 歓和(札幌医大・2解剖学), 苗代 康可(札幌医大医療人育成センター), 篠村 恭久(札幌医大・1内科), 今井 浩三(東京大医科学研究所附属病院)
抄録 <背景>骨髄間葉系幹細胞(MSC)は炎症性腸疾患など多く疾患への臨床応用が期待されている.しかし,MSCが腫瘍増殖に与える影響は不明である.<目的>大腸癌細胞におけるMSC依存性の増殖機構を明らかにする.<手法>大腸癌細胞株およびMSCを免疫不全ラット皮下に共移植し,腫瘍生着・増殖と血管新生に与える影響およびこれらの機序について検討を行った.また,in vitro共培養実験によりMSCが癌細胞の増殖に与える影響を検討するとともに,走化性アッセイ法,DNAメチル化解析によりMSC大腸癌細胞とのMSC大腸癌細胞とへの相互作用機序を検討した.<結果>皮下移植腫瘍はCOLO320ではMSC依存性の腫瘍生着・増殖が認められたがHT-29は非依存性であった.この二つの腫瘍を比較したところ,COLO320では腫瘍内微小血管密度が高くMSC生着数も有意に多く,MSCの一部は血管周皮細胞へ直接分化し血管新生に寄与していた.また,宿主由来細胞を腫瘍内へ遊走させ,血管新生を促していた.COLO320とMSCの共培養では細胞接触を介してCOLO320の増殖が促進された.次にCOLO320単独移植とMSC共移植腫瘍をcDNAマイクロアレイ解析により比較した.最も発現が増強した遺伝子はCXCL12で,走化性アッセイ法ではCXCR4陽性であるMSCはCXCL12に対し最も走化性を示した.DNAメチル化解析ではCOLO320は他の大腸癌細胞株と比べてCXCL12のCpG islandが高率に脱メチル化されていた.また,COLO320の脱メチル化酵素AID,TETの発現は他の大腸癌細胞株と比べ有意に増加していた.<結論>MSC依存性の大腸癌細胞増殖機序として,大腸癌細胞のAID,TETによりCXCL12 CpG islandの脱メチル化が起き,CXCL12の分泌によりMSCが腫瘍内に保持され,MSCは直接的なCOLO320増殖促進と腫瘍内の血管新生の促進により腫瘍の増大を促進するポジティブフードバック機序の存在が推察された.
索引用語 MSC, CXCL12