セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(基礎2)

タイトル 消P-408:

シクロスポリンによるSTAT3シグナルを介した腸管上皮細胞アポトーシス抑制効果

演者 櫻庭 裕丈(弘前大大学院・消化器血液内科学)
共同演者 石黒 陽(国立弘前病院・消化器・血液内科), 平賀 寛人(弘前大大学院・消化器血液内科学), 蓮井 桂介(弘前大大学院・消化器血液内科学), 福田 眞作(弘前大大学院・消化器血液内科学)
抄録 【目的】我々はこれまでに炎症腸疾患動物実験腸炎モデルにおいてシクロスポリン(CsA)が腸管粘膜局所でのTGF-βシグナルの発現を高めることにより腸上皮細胞アポトーシスを介した粘膜障害を抑制することを明らかにした.一方,IL-22の腸管上皮細胞のSTAT3活性化を介した粘膜障害抑制効果が最近報告されている.本研究ではCsAの粘膜障害抑制効果と腸管上皮細胞のSTAT3活性化との関連について検討を行った.【方法】C57BL6マウスに4%DSSを自由飲水させ腸炎を誘発.CsAはDSS飲水開始1日前より連日腹腔内投与し,抗TGF-β抗体はDSS飲水開始時に腹腔内投与した.腸炎の評価は,体重変化,H&E染色による病理組織学的スコア,TUNEL法による腸上皮細胞アポトーシス数で行った.分離した腸管組織から蛋白抽出しELISA法によりIL-22, TGF-βの発現レベルを検討した.免疫染色によりIL-22, IL-22 receptor, リン酸化STAT3の発現について検討した.EDTA環流法により分離した腸上皮細胞におけるリン酸化STAT3の発現をELISA法で測定した.【成績】コントロール群に比しCsA投与群で,体重減少,病理組織学的腸炎スコア及び腸上皮細胞アポトーシスが有意に抑制された.またコントロール群に比しCsA投与群でELISA法及び免疫染色による検討で腸管局所のTGF-β及びIL-22の発現増加を認めた.抗TGF-β抗体投与により,腸上皮細胞アポトーシス抑制を介した粘膜障害抑制効果は消失した.腸上皮細胞においてコントロール群に比しCsA投与群でリン酸化STAT3の高発現を認めた.一方,抗TGF-β抗体投与により腸上皮細胞におけるリン酸化STAT3の発現増加は抑制された.IL-22 receptorの発現は,腸上皮細胞に一致して認めコントロール群及びCsA投与群,さらに抗TGF-β抗体投与においても発現レベルに変化はなかった.【結論】CsAによる粘膜障害抑制効果にはTGF-βシグナルを介した腸管上皮細胞のSTAT3活性化が関与している可能性が示唆された.
索引用語 シクロスポリン, STAT3