セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(診断1)

タイトル 消P-412:

補体C1qおよびNO測定の炎症性腸疾患活動性評価における有用性の検討

演者 藤原 達雄(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
共同演者 片倉 響子(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科), 鈴木 良磨(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科), 郡司 直彦(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科), 大平 弘正(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
抄録 【背景/目的】 炎症性腸疾患(IBD)の治療においては,粘膜治癒の達成が重要であるが現時点では内視鏡検査による粘膜評価以外に簡便なマーカーが報告されていない.補体C1qはWntシグナルを介する老化促進物質であることがわかり,慢性炎症や発癌に関与することが報告された.腸粘膜再生に関与するC1qを測定することで,粘膜治癒を評価できるのではないかと考えた.またIBD活動期において粘膜障害時のNO産生の増加やiNOS遺伝子の発現増強が報告されており,あわせて疾患活動性との関連を検討した.【方法】1)IBD患者および健常人の血清中C1q,NO,TNF-α,IL-6濃度をELISA法により測定する.2)大腸組織におけるiNOS,TNF-αのmRNA発現をRT‐PCR法により測定する.【対照】潰瘍性大腸炎(UC)患者23名(活動期5名,寛解期17名),クローン病(CD)患者26名(活動期9名,寛解期17名),健常者22名(コントロール群)を対照とした.【結果】1)C1qはCD活動期(19.3μg/ml)でコントロール群(13.3μg/ml)と比較し有意に高値であった.UC群ではコントロール群と比較し有意差はなかった.血清NOはCD寛解期(23.4umol/ml)でコントロール群(15.6 umol/ml)と比較し有意に高値であった.IL-6はUC活動期(55.9pg/ml)・寛解期(24.1pg/ml),CD活動期(19.3pg/ml)でコントロール群(5.1pg/ml)と比較し有意に高値であった.2)組織中iNOSのmRNA発現はUC活動期,CD活動期で有意に高値であった.組織中TNF-αのmRNA発現はUC活動期,CD活動期・寛解期で有意に高値であった.【考察】 C1qはCD活動期で有意に高値であった.組織中iNOSのmRNA発現はUC活動期CD活動期で有意に高値であった.これまでにCDにおけるC1q値を測定した報告はなく,老化の原因タンパクとして注目されているC1qが,比較的若年に発症するCDで高値であったことは非常に興味深い.CDにおいてはC1qが,UC,CDにおいては組織中NOが粘膜治癒のマーカーとなる可能性が示唆された.今後症例を蓄積し,さらに検討を進めていきたい.
索引用語 C1q, 炎症性腸疾患